昨年の阪神2位・横田の開花に期待
2014年10月24日
大きな期待を寄せるのは、可能性を秘めた素質以外にもある。掛布DCが、鳴尾浜で横田を初めて見たときは「ダメだな」と思ったという。スイング時の右肘や右手首の使い方の基本が全くできていなかった。当初、ルーキーのフォームはいじらないと決めていたが、見るに見かねて、春季キャンプ中にその部分だけ修正に着手した。すると、徐々に悪癖が改善された。このときのように、教えたことがすぐに身につく「吸収力」は、横田の特長のひとつだ。
森は大阪桐蔭時代に、全国大会や世界大会など常に高いレベルに身を置いていた。一方、横田は全国レベルを経験せずに、プロの世界に飛び込んだ。プロ入り当初、高校の野球部にはなかった自身初体験のストレートマシンに苦戦したほど。だが、2軍公式戦の出場機会が増え、プロ野球に慣れ始めると、シーズン残り1カ月で6本塁打を量産した。
このとき掛布DCは「対応力というか、吸収力がすごい。出だしを考えたら、これだけ打てばたいしたもの。ケガはしないし、体が頑丈なところが強み。プロで戦っていくためには大きな武器。持っているものは確かだし、将来が楽しみ」と評価した。
ただ、現状は「可能性がある」というレベルだ。掛布DCは言う。「その素質が開花しない可能性もある。そうやって消えていった選手はこれまで何人もいるから。球団が可能性を開花させてあげることができなければ、そのまま消えることもある」
1年目の今季、2軍公式戦79試合に出場して、打率は・225。変化球や1軍クラスの直球への対応はまだまだだ。掛布DCが「7~8割は完成されている」という森に対し、横田はプロ野球選手として、ほぼ0に近いところからスタートしている。走攻守において、基礎から学ばなければいけない。ここからは本人の努力はもちろん、阪神の育成手腕が問われる。
ミスタータイガースが見いだした素質が「原石」のまま終わるか、光り輝くか。限りない可能性を秘めた阪神・横田慎太郎の成長が楽しみでならない。
(デイリースポーツ・西岡竜一)