【スポーツ】飛び込み観戦が面白くなる「技と演技構成」の秘密 選手自身の得手不得手で異なる戦略とは
高さ、ダイナミックさ、水しぶきの立たない入水に目がいきがちな飛び込み競技だが、実は選手たちは一つの大会で6種類の技を飛んでいることをご存じだろうか。小学3年から大学卒業まで13年間飛び込みに打ち込んだ記者が、技の秘密を解説する。
採点競技の飛び込み。男子は6本、女子は5本の演技を行い、一つ一つの技に7人の審判員が点数をつけ、その合計点数で争う。実は一つの試合で同じ技を飛ぶことは禁止されており、全て“回転する方向”が違う。
技は全部で6種類で、「群」と呼ぶ。
1群・プールを向いて台に立ち、前方に回る前飛込。
2群・プールに背を向けて台に立ち、後方に回る後ろ飛込。
3群・プールを向いて台に立ち、後方に回る前逆飛込。
4群・プールに背を向けて台に立ち、前方に回る前飛込。
5群・1~4群の飛び方にひねりが加わるひねり飛込。
6群・台上で逆立ちをする逆立ち飛込。
1群と2群は、マット運動でいう前転と後転と同じ回転でイメージしやすいと思うが、3群と4群は特殊。3群はプールを向いて後ろに回るため、後頭部が台を通過する。4群はプールに背を向けて前に回るため、顔面が台を通過する。この二つはかなりの恐怖を伴い、苦手にする選手が多い。3群は特に難しく、「3群が上手な選手が大会で勝つ」と関係者が口をそろえるほどだ。
選手ごとに群の得手不得手があり、それによって飛ぶ順番を変える。これが飛び込みにおける戦略になる。男子高飛び込み日本代表の玉井陸斗(立命館ク)は成功率の高い4群を最初に、得意の5群を最後に飛ぶ演技構成。課題とする2群と3群は中盤に配置している。1本目を確実に成功させて勢いをつけ、中盤でたとえ失敗しても最後に逆転できるスタイルだ。
2024年パリ五輪では序盤から高得点を出し、中盤の3群にミスが出たが、最後の5群を決めて日本史上初の銀メダルを獲得した。もし、苦手な技を最後に配置していれば緊張などで入水がわずかにぶれ、結果が違った可能性もある。五輪での快挙は、玉井の演技構成もうまくはまった一面もある。
玉井と並列して申し訳ないが、記者は逆立ちが大の苦手。6群を1本目に飛び、ストレスを減らしてから残り5本を気楽に飛ぶスタイルを取っていた。ただ、気が抜けて全く試合で勝てなかった。
飛び込みを見ると、高い場所から飛ぶダイナミックさや、回転の迫力に目を奪われる。ただ、技の種類に目を向けて見ると、選手の得手不得手が発見でき、この選手の勝負どころ、逆転の可能性があるのか、など観戦に深みが出ておもしろくなる。もし観戦の機会があれば、技の種類にも注目して見てほしい。(デイリースポーツ・谷凌弥)
