【野球】日本ハム・島本 16年目の新天地で活躍支える阪神・藤川監督の教えとは 胸に刻んだ「一球一球に意味がある」
16年目の新天地で、ベテランがいぶし銀の働きを見せている。日本ハム・島本浩也投手(33)は開幕から4試合に登板して1ホールド。走者を背負った場面での火消しが光る。プロ入りから15年を過ごした阪神からのトレード移籍。大きな影響を受けたという古巣の阪神・藤川球児監督(45)の教えが、リリーバーとしての幹となっている。
開幕戦で巡って来た新天地デビューは、いきなり1点ビハインドの八回2死満塁。島本は外角低めに外れるボールから入った。「あれはストライクは狙ってないです。初球から甘く入ってドーンっていうのだけは避けたい。本当を言えばストライクゾーンからボールでファウル、空振りが一番だけど」。四球も許されない状況での移籍後初登板で、まず1球を費やす冷静さ。試合はソフトバンクに敗れたものの、自身は3球で柳町を投ゴロに仕留めて切り抜けた。
ピンチの中で登るマウンド。開き直って抑えるために、『人の残した走者だから打たれてもしょうがない』という思考で臨む投手も少なくない。だが、島本は「僕は逆に人のランナーほど抑えなきゃいけないって、気持ちは入りますよ。止めてくれって任されて、絶対抑えないといけない状況なので」という。1軍で救援の経験を重ねるにつれ「ピンチの方がよりしっかり腕が振れる」感覚に行き着いた。
修羅場にも動じない強さを身に付けたのは、阪神・藤川監督から受けた薫陶が大きい。自己最高の63試合登板と飛躍を遂げた19年には、現役最終盤だった指揮官と「ブルペンで一緒にやらせてもらって。あの時はずっと隣で聞いていました」と貴重な時間を過ごした。打者の抑え方、配球面では「『とにかく打者の反応を見ろ』と。ここに投げたらどういう待ち方をするか、どう反応するか。一球一球に意味がある」という教えを胸に刻み込んだ。「違う投手が投げていて『次、ここにいったら抑えられる』とか、全部当たるんで、すごいなって」と、懐かしそうに笑って振り返った。
もちろん、私生活から常に野球のことを考える姿もお手本になった。「本当にもう一から十まで教えてもらった」と感謝の念は尽きない。20年にトミー・ジョン手術を受けた際には、病院を紹介してもらうなど、同手術の経験者として親身になって相談に乗ってもらった。
昨年11月のトレード決定後、藤川監督と食事をする機会があった。その時「前向きやぞ」と言葉をかけられた。「たぶん、パッと見た時に悲しそうな感じに見えたんですかね。要らなくて行かせたわけじゃないというか『とにかくパ・リーグに行って投げるチャンスは絶対あるから頑張ってこい』って」。そんな気遣いに、心に少し残っていた引っかかりもとれた。
メジャーや独立リーグも経験した指揮官からは「いろんなところで野球をすることも、めちゃくちゃいいこと。マイナスに捉えるな」とも言われていた。プロ16年目にして初めて異なる環境で迎えた開幕。島本は「楽しいですね、今。今までの普通が普通じゃない。全てが新鮮というか。いいと思います」と屈託なく笑った。培ってきたキャリアを自負する一方「1年生って感じで。そこは気持ちも新たに」。“師匠”の言葉を実践するように、33歳はフレッシュに腕を振っている。(デイリースポーツ・藤田昌央)
◆島本 浩也(しまもと・ひろや)1993年2月14日生まれ、33歳。奈良県出身。176センチ、73キロ。左投げ左打ち。投手。福知山成美から10年度育成ドラフト2位で阪神入り。14年オフに支配下へ昇格。19年にはチーム最多の63試合に登板するなど、貴重な中継ぎ左腕として活躍。25年11月にトレードで日本ハムへ移籍。今季は登板4試合で1ホールド、防御率4・50。
