【野球】データ分析、活用でDeNA守護神の復活手助け 17年引退後起業→22年コーチとして復帰の異色経歴
デイリースポーツ記者が独自目線で注目した人物、スポーツなどを掘り下げる新企画「クローズアップ」(随時掲載)。今回は、DeNA・小杉陽太チーフ投手戦術・育成コーチ(40)を取り上げる。現役引退後に起業し、ビジネスの世界へ。データ分析を野球のパフォーマンス向上へと落とし込む新たな視点を見いだし、2022年にコーチとして復帰した。守護神・山崎康晃投手(33)の復活も支える同コーチの異色の経歴に迫った。
守護神が鮮やかに復活を遂げている。ここまで6セーブをマーク。その裏にデータ活用がある。投球フォームの動作解析によって、右腕の特徴であったインステップを矯正。それがうまくマッチし、パフォーマンスの進化につながっている。
その一助となったのは、データ分析を得意とする小杉コーチだ。「年齢を重ねて体も変化していく中で、力勝負だけでは通用しなくなってきたというのがこの2、3年続いていた。入来2軍投手コーチから『データや動作解析だったりを、あいつにインプットしてくれないか』と言われたのがきっかけです」。成果の表れに「データや定量的なものを信じて受け入れてやってくれているのが一番」と、山崎の前向きな姿勢に目を細める。
小杉コーチの経歴は異色だ。08年度ドラフト5位でJR東日本から横浜(現DeNA)に入団し、先発から救援までこなす右腕として活躍。17年の引退後に起業し、ビジネスの世界で生きてきた。
その契機は12年。親会社がDeNAとなり、当時オーナーだった春田真氏や、創業者の南場智子現オーナーらの話を聞く機会に恵まれた。IT業界の第一線で活躍する経営者たちの考え方に感銘を受け、南場オーナーの著書「不格好経営」も熟読。「もっと大きくて広くて一つのサービスやプロダクトで世の中や人を動かせる領域があるんだと知り、すごく面白いなと」と興味をひかれた。
企業の商品のサンプリングや食品メーカーのパッケージのデザイン受託など、失敗を重ねながら多様な分野で泥くさく会社を切り盛りした。「不思議とスポーツに寄ってくんですよね。商品もスポーツ向けのサプリメント、ドリンクであったり」と次第にスポーツビジネスの領域へ。20年頃からかねて関心の強かった野球のデータ分析を行うようになった。これが現在への布石だった。
「ラプソード」も自身で購入。「自分が実験台になってこういうふうに投げればこういう数値が出ますと実証したり」。その結果をSNSで発信すると全国の野球関係者から注目が集まるようになり、四国学院大(香川)をはじめデータを用いたパーソナルでの指導を各地で行ってきた。
これに着目したのが古巣のDeNAだった。小杉コーチの指導は、「MLBの野球に追いつけ追い越せ」「世界最先端の球団を目指す」との目標を掲げていた球団の未来像とマッチ。22年、コーチとして復帰した。
今季からベンチで戦術を担当する。客観的なデータを活用した投手起用や運用が最大の強み。「選手の引き出しも上がってきていますけど、もっと伝えられることがあると思う」と勝利への戦略へ余念がない。既成概念にとらわれない新たなコーチ像。「全然違う世界にいた5年間がなかったら、今の僕はいない」。柔軟な視点はベンチに厚みをもたらしている。(デイリースポーツDeNA担当・福岡香奈)
