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凱旋門賞へ…武豊独占インタビュー

2013年9月30日

 凱旋門賞に向けて意気込みを語る武豊=京都市内

 凱旋門賞に向けて意気込みを語る武豊=京都市内

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 「追い切りの感じはもうひとつピリッとしなかった。闘争心がないというか、落ち着き過ぎているように感じた。ゲートでかなり待たされたけど、日本ではゲートでジッとしていない方なのに落ち着いていた。フランスは馬優先でストレスを与えない競馬のシステム。キズナには合うのかも」

 ‐レースを振り返ってください。

 「次が本番。どんな競馬をするかという感じだった。がっかりする結果じゃなければいいかなって思っていたけど。周り(の騎手)の手が動くなか、手応えに余裕があった。今までのレースのなかでも一番と言ってもいいぐらい上手に走っていましたね。(ロンシャンは)前日まで雨が降っていたけど、芝がしっかりと生えていて走りにくいということはなかった。レースもまるで気になることがありませんでした。海外のジョッキーからは“日本馬、強いな”って言われましたよ」

 ニエル賞と同日に行われた、古馬前哨戦のフォワ賞・仏G2をオルフェーヴルが完勝。その結果を受けて、英大手ブックメーカーのウイリアムヒル社はオルフェを1番人気、キズナを4番人気に推すなど現地での評価をともに上げている。

 ‐ライバルについて。

 「やっぱりオルフェーヴルでしょう。20年以上凱旋門賞を見てきて、(昨年の2着時のように)ケツから馬なりで先頭に立った馬は初めて見た。全馬ゴボウ抜きで。びっくりした。(今年の)フォワ賞も(キズナの帯同馬のステラウインド=5着で)一緒に乗っていて“すげえっ”と思った」

 ‐外国馬にも当然、強敵がそろっています。

 「(前哨戦のひとつである)ヴェルメイユ賞を勝った(今年の仏オークス馬)トレヴは着差以上に強かったなぁ。キングジョージ(勝ち馬でドイツ馬)のノヴェリストは時計が速かった。アスコット(競馬場=英国)であんな時計で走れるの?って。今年はすごいメンバーですよ。みんなが目指すレースだから強いのは当たり前だけど。向こうの報道も“近年まれに見るハイレベル”と言っていますし」

 ‐ロンシャン競馬場について。

 「難しいコースじゃない。下りがきついけど、キズナは上手に走っていましたからね。キズナにはロンシャンが合う。僕はロンシャンで結構重賞を勝っているんです。G1だけでもスキーパラダイス(94年ムーランドロンシャン賞)、アグネスワールド(99年アベイユドロンシャン賞)、インペリアルビューティ(01年アベイユ‐)。海外の重賞はロンシャンが一番勝っている」

 これまで海外でG1・7勝を挙げる武豊。凱旋門賞は日本人最多の5回騎乗して3着が最高だ。デビュー27年目の今年、6度目の挑戦で世界最高峰レースの頂点を狙う。

 ‐凱旋門賞の存在を知ったのは。

 「騎手になる前から知っていましたよ。映像で見たり、写真で見たり。“へぇ~、こんなレースがあるんだあ”という感じで、すごく遠い感じがしていました。騎手になってからはカッコいいなとか、いつか乗れたらいいな…って夢のような存在のレースでしたね」

 ‐抱いていたイメージは。

 「とにかくすごいレースなんだろうな、と。ダンシングブレーヴ(=86年勝ち馬で歴代最強の呼び声が高い)は映像を見てびっくりした。でも、昔は凱旋門賞に行くっていうことに全く現実味がなかった」

 25歳だった94年に英国馬ホワイトマズルで凱旋門賞初騎乗。所有する吉田照哉オーナーから鞍上に指名された。

 ‐レースを迎えるまでの気持ちは。

 「依頼された時はびっくりしましたね。エッ?オレ?って感じで。アメリカやフランスで乗っていたけど、海外経験が多くなかったから。当然すごくチャンスのある馬だったから、勝ちたいなという気持ちが強かった」

 ‐6着でした。

 「あまりいいレースができなかったし、状態も(2走前の)キングジョージ(2着)で乗った時の方が良く感じた。でも、いつかこのレースを勝ちたいな、という気持ちは乗ってからの方が強くなりましたね。大きなチャンスをもらって、いい結果を出せなかった悔しさが大きかった。あの悔しい気持ちがあって、海外競馬に余計力を入れたのもある。すごくいい経験をさせてもらって、オーナーには感謝しています。ありがたかったな、と今でも思う」

 ‐01、02年にはフランスへ長期滞在しました。

 「アメリカのチャーチルダウンズで(フランスの)ジョン・ハモンド調教師と会って“アメリカで乗っているの?来年は来いよ。ユタカが来るなら乗せるから”と言われて。ヨーロッパ競馬に対して苦手意識がなかったし、最初からスッと入れた感じ。凱旋門賞がさらに近くなるわけですからね。日本と行ったり来たりだったけど、あの2年はすごく有意義だった」

 ‐01年にフランス馬サガシティで凱旋門賞2度目の騎乗。10番人気ながら3着と健闘しました。

 「日本人だからってことではなく、一ジョッキーとして超名門のアンドレ・ファーブル(調教師)から指名されたのがすごくうれしかったですね。遠征しているわけではなく、地元の馬だったから。初めての時とは雰囲気が違ったかな。普通の感じでスッと乗れた。当然、一発を狙っていたけど。いい伸びだったし、一瞬夢を見た。あの3着は周りからもすごく褒められたし、自分自身もいい仕事をしたって感じになりましたね。“いつか勝てるんじゃないかな、勝てるぞ”とそのころから思うようになった。その日にG1のアベイユドロンシャン賞(インペリアルビューティ)を勝ったんです。凱旋門賞当日に勝ったというのは大きい。あの日にロンシャンのジョッキールームにいるっていうのはすごくいいな、って。ここにいなきゃな、と思いました」

 ‐凱旋門賞3度目の騎乗は06年ディープインパクト。世界中から注目を浴びました。

 「当然勝てると思っていましたからね。普通なら勝てるんだろうけど…。ディープは間違いなく世界で一番強かったと思うし。ただ、体調が本当じゃなかった。競馬は難しいな、勝つのは難しいなと痛感しましたね。でも、それまでとは自分の置かれる状況が全然違ったんです。2シーズン、フランスで乗ったのもあるし、すごく歓迎されていて居心地が良かった。負けた時に、フランスの関係者や友達がすごくがっかりしていたから…。本当に受け入れたくないぐらい悔しかったけど、自分のポジションが随分変わったなと思いました。余計にいつか勝ちたいと思いましたね。夢に出てくるぐらい悔しいですから。7年前?もうそんなに立つのか…早いね」

 ‐08年はメイショウサムソン(10着)。これが4度目でした。

 「07年に行くはずだったけど(当時、感染馬が多発した)馬インフルエンザの影響で行けなかった。前の年に行きたかったな。結局、断念した年の秋の天皇賞で圧勝しましたからね。難しいな、と思いました」

 ‐5度目の騎乗となった10年ヴィクトワールピサは7着(8位入線)。

 「ケガをして、この馬のクラシックに乗れなくて。“秋は武豊で凱旋門賞に行く”と言われたときはすごくうれしかったし、リハビリの一番の励みになりました。ニエル賞(4着)の内容が良かったから、本番では楽しみだなと思ったけど、力を出せなかった」

 ‐コンビを組んだ馬で“これは凱旋門賞に挑戦したかったな”という馬はいますか。

 「ダービー馬は全馬。スペシャルウィークは道悪で勝っているし、タニノギムレットもダービーで引退しちゃったのが残念。メジロマックイーンとかステイゴールドも行きたかったなあ」

 それまでトップを突っ走っていた武豊だが、ケガの影響などもあり10年からは定位置だったリーディングの座を譲ることに。取り巻く状況が大きく変わった。

 「昨年の秋にトレイルブレイザーでブリーダーズCターフ(米G1、4着)に参戦した時、こういうところに普通にいなきゃ駄目だなって、自分のなかで強く思った。ノースヒルズのオーナーがチャンスをくれて、自分のなかでもう一度スイッチが入ったような感じがしました。フランキー(デットーリ)、ルメール、ライアン(ムーア)もいて、彼らとしゃべっていて、そういう世界のレギュラージョッキーにもう一度入らなきゃ駄目だ、と。去年のブリーダーズCはそういった意味でも行かせてもらったことを感謝しているんです。それに、帰ってきてすぐにマイルCSを(サダムパテックで)勝ったし」

 ‐去年の凱旋門賞について。

 「ちょうどトレイルブレイザーの遠征初戦のアロヨセコマイル(2着)で、アメリカにいたんです。レース終了後、ノースヒルズのスタッフと食事して、その時にキズナがデビューした。スタッフが日本と電話をつないで“勝ちました”と聞いて、アメリカでオーナーの関係者と“良かった良かった”って喜んで。(自身が騎乗してG1・2勝を挙げたファレノプシスの母でもある)キャットクイルの子で強いんだな…と思っていた。不思議な縁があるでしょ。それから、帰りの飛行機のなかで凱旋門賞が行われていた。着いてからオルフェが2着と聞いて“え~っ”と驚いたんです」

 ‐“武豊・完全復活”を思わせたのが自身5勝目となった今年のダービー。キズナの凱旋門賞挑戦はいつ聞いたのでしょうか。

 「僕自身が凱旋門賞から離れた感じになってしまったからね…。ダービー前にオーナーが“ダービーを勝ったら凱旋門に行きたいな”とおっしゃっていたので。勝ったら(凱旋門賞に)行けるんだって思いましたね。扱いにくい馬だといろいろ難しいけど、キズナはいろいろなことに順応する能力を持っている。行くと聞いて“いいな。合っているな”と思いました」

 ‐キズナのローテーションはジョッキーが希望されたのでしょうか。

 「そうですね。いろいろとフランス競馬に乗ってきましたから。乗るだけじゃなくて、チームの一員として力になれることはなりたいですし。ダービーが終わって、その日にオーナー、調教師と食事をした時に秋の話になって、ニエル賞といういいレースがありますよと伝えました。3歳同士だし、ロンシャンの2400メートルだしってね。“そりゃいいな、そうしよう”ってスッと決まりました。前哨戦についてはプラスになることもあるけど、単純な問題じゃない。いいステップがない。フォワ賞やニエル賞は9月半ば。間隔をあけた方がいい馬は使いたくないし、検疫の問題もあるから。キズナはレース間隔をあけない方がいいんです。毎日杯、ダービーと(勝ったように)中2週にすごく強い。気性のせいだったり、仕上げもちょうどしやすいのかな」

 ‐預託先のパスカル・バリー厩舎もジョッキーの希望ですよね。

 「名門中の名門厩舎ですからね。調教場に出やすいというのは大事。(キズナが滞在する)シャンティイはきれいだし、広い。今だに迷子になるけど(笑い)。落ち着ける環境だから、馬にとってすごくいい」

 全てにおいて手探りであることは否めなかったニエル賞当時とは異なり、中間の調整は順調そのもの。今後は、10月2日に武豊が騎乗しての最終追い切りを予定。日本競馬界にとって“夢”の凱旋門賞制覇へ、陣営は悔いのない、最高の仕上げを施すつもりでいる。

 ‐最後に抱負を

 「本当にチャンスがあると思う。凱旋門賞は3歳馬が強いし、(古馬牡馬より3・5キロ軽い)56キロの斤量も有利になってくる。馬も順調で予定通りにきて、前哨戦で予想以上の結果を出して、ここまでいいムードで出られるなんて難しいことですから。ダービー馬として堂々と出られる。日本のファンを喜ばせたいですね。日本馬、日本人騎手の初勝利を皆さんに届けたいと思います」

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