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一般家庭出身11歳の歌舞伎役者 上村吉太朗

2013年2月25日

「新八犬伝」で犬江親兵衛を演じる上村吉太朗

「新八犬伝」で犬江親兵衛を演じる上村吉太朗

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「GOEMON」で友市を演じる上村吉太朗

 「師匠にやりたいんやったらやってみる?と声をかけてもらったんです。もううれしくて絶対にやる!って。初めはセリフを覚えられなくて大変でした。1回だけのつもりだったけど、師匠が上村吉太朗って名前をつけてくれて、うれしかったです」

 ◆歌舞伎は世襲で受け継がれるが、一般家庭から入門して歌舞伎役者を目指すものもいる。多くは中学、高校を卒業後に門を叩くが、例外的に見込みのある子役が認められて、幹部俳優の部屋子として師匠の身の回りの世話をしながら、英才教育を受ける。

 -初舞台以後、何度か歌舞伎の舞台に立ち、平成21年に正式に吉弥の師匠である片岡我當に入門し部屋子となりました。

 「部屋子になって、やっぱりすごく変わりました。大きい役もやらせてもらうようになり、我當先生と師匠にいろいろと教えてもらってます。自分から聞きに行くんですけど、我當先生は優しくて、でもダメなところはダメと言ってくれる。そしていつも『頑張りなさい』って。大きな役や大変な役のときもいつも『頑張りなさい』って。我當先生はお父さん、師匠はお母さんみたいです」

 -昨年9月の松竹座では『雁のたより』の床屋の見習い・安を、1月は『操り三番叟』で千歳を演じるなど大役が続いています。特に『操り-』では人間国宝の坂田藤十郎と一緒の舞台で、勉強になることもおおかったのではないですか。

 「藤十郎さんからは、特にアドバイスというのはなかったんですけど、いつも頭を撫でてもらって『またやろうね』といっていただいてすごくうれしかったです。大きな人とできるのはありがたいなと思いました」

 -今月は大阪松竹座に出演。昼の部の『新八犬伝』で八犬士の一人・犬江親兵衛を、夜の部『GOEMON』では主人公の子供時代を演じています。

 「昼の部では初めて立ち回りをしました。子役で勢いがある元気な役です。夜の部は2年前の初演と同じ五右衛門(愛之助)の子供時代の友市です。歌舞伎なのにフラメンコを踊ってるんですよ!フラメンコは初めてだったので面白かったです。前回とは振りが違っているんですけど、お稽古が2日間しかなかったので大変でした。初演のときから身長が10センチくらい伸びたので、可愛らしく見えるようにするのが大変です。他の舞台に出る時も、最近は少し腰を折ったりして、小さく可愛らしく見えるように注意しています」

 -昼の部の『新八犬伝』では隈取もされていますね。

 「最近こしらえは自分でやってます。でも昼の部の隈取はまだうまく描けないんで、やってもらっています。でも時間のあるときに少しずつ練習しているので、早く自分できちんと描けるようになりたいです」

 ◆初舞台のときに吉弥から言われたことは「自分で決めたことは最後までやりなさい」だった。それ以来、「決めたことやから最後までやる」が口ぐせ。思ったようにできずに涙することもあるが、決して投げ出さない。駅のホームでも、スーパーの中でも、無意識のうちに踊りの振りを繰り返している。

 -ふだんの稽古はどうしていますか。

 「芝居はビデオを見て、それからお母さんに相手をしてもらってます。習っているのは鼓、三味線、琴、日舞。それぞれ月に4日間ずつ集中してやってて、毎週何かの稽古があります。スポーツはしてないけど、日舞やりはじめてから、太ももがすごくなったんです!喘息も出なくなったし。小さいころはちょっと走ったらゼエゼエしてたけど、いまは連獅子やっても平気。本当の稽古がないときも、頭の中でいつも稽古してます。一番難しいのは日舞。セリフがなく姿で女性をあらわすのが大変です」

 -鳴り物の稽古はいかがですか。

 「耳はいいとよく言われます。岸和田なんで、小さいころからずっと太鼓や鐘の音をきいてたからだと思います。だんじりは大好き!だんじりのときは、芝居が終わったらすぐに帰って太鼓を叩いたりしてます」

 -現在は岸和田の公立小学校に通いながら、舞台のあるときは劇場に通っていますね。大阪松竹座で片道30分、京都南座は片道2時間。両立は大変ではないですか。

 「学校では普通の小学生ですよ。今月は2時間目まで出てから劇場に来てます。いまは寒いからあまり外に出て遊ばないけど。授業に出られないときの勉強は、お母さんに教えてもらってます。友達も見に来てくれて『あんなんやっとるのか~』『すごいわ~』って言ってくれました。歌舞伎をやり始めたころは『おかま』って言われたこともあったけど(笑い)」

 -4月からは中学生。やってみたいことはありますか。

 「部活もやってみたいけど、けがするのが怖いから運動部は入らないと思う。演劇部があれば入ってみたいかな。それより勉強が大変になりそうなんで心配です」

 -その4月には京都南座の『歌舞伎鑑賞教室』(20~25日)で足拍子が特徴的な舞踊の『供奴』にも挑戦します。

 「5歳の時に松竹座で翫雀さんの『供奴』見たんです。ものすごく面白くて、8日間毎日通ったくらい!僕もずっと一緒になって足で拍子を取ってたんです。大好きな演目なんで、むちゃくちゃうれしい!稽古も始まったし、4月がものすごく楽しみです」

 -将来は立役、女形どちらをめざしますか。

 「上方は立役も女形も両方できないといけないんで、僕も師匠のように両方できるようになりたい。将来やりたいのは『夏祭浪速鑑』の団七と『助六』の髭の意休。意休は我當先生がやってるのを見て、格好いいなあ~と思って。衣装もすごく好きなんです。女形だったら『義経千本桜』四の切の静です。先月、松竹座で秀太郎さんがしてて、僕もやってみたいです。赤い着物(=歌舞伎では姫役が着る)が好きなんです」

 ◆歌舞伎のことを語りだすと目がキラキラと輝く。

 -歌舞伎をやめたいと思ったことはありませんか。

「歌舞伎は楽しいので一度も辞めたいと思ったことはありません。楽屋に入ると自分でも気分が変わるのがわかります。(本名の)和田祥太朗じゃなくて、上村吉太朗になるんです。学校より楽屋の方が楽しい。お兄さんたち(先輩俳優)と芝居の話をしたり、いろいろ教えてもらったり。だから歌舞伎をやめようと思ったことは一度もない。今月は特に梅丸さんや壱太郎さんやみたいに年の近いお兄さんがいっぱいいて楽しいです。将来は師匠のような歌舞伎俳優になりたいです」

  ◇  ◇

 師匠である上村吉弥の話

 「私は高校卒業した18歳でこの世界に入りましたから、幼くしてこの世界に入った吉太朗はうらやましいですよ。小さなときから本物に触れ、体で覚えることができるわけですから。それに絶対音感っていうんですか、すごく耳がいいんですよ。以前、琴を使う芝居があったんです。でも稽古場で調弦されていない琴を弾いたら、耳をふさいでましたからね。

 それでもやはり門閥の子息じゃないから、坊ちゃん方に比べてチャンスは少ない。同じような年代の坊ちゃん方が獅子ものをされているせいか、吉太朗も獅子にすごく憧れていたようなので、昨年は南座の歌舞伎鑑賞教室で連獅子をやりました。普段は私は女形ですけど、まだ吉太朗が小学生のうちなら父と子に見えるんじゃないかと(笑い)。

 4月の歌舞伎鑑賞教室では私が藤娘、吉太朗が供奴をやります。4月は東京で歌舞伎座が開場し、四国でもこんぴら歌舞伎があります。そこでいろいろ考えた結果、今回は舞踊に決まりました。南座の舞台で、門閥外の中学生になったばかりの吉太朗が一人で舞台を務めるというのは大変なことだと思います。

 吉太朗は体調悪くて学校を早退しても、稽古は休まない。それに素直で、私が言ったことはちゃんと次の舞台で直してくる。だから私も間違ったことは教えられない。こちらも勉強になることがありますね。楽屋では普通の子供ですけど、舞台に上がると顔つきが変わるから、すごいですね。

 そろそろ声変わりもあり、苦しい時期かもしれません。しかしそれを乗り越えても、上方の役者は立役と女形の両方できなくてはならない。山城屋さん(藤十郎)も女形をやりこんでやりこんで、そして立役をされている。吉太朗も最終的には立役になるかもしれないけど、それまでにしっかりと体を作って、女形もできるようになってもらいたいですね。

 現在上村を名乗るのは私と純弥と吉太朗の3人だけ。それだけに吉太朗には頑張って欲しいですね」

 上村吉太朗(かみむら・きちたろう)2001年2月26日、11歳。大阪府岸和田市出身。本名・和田祥太朗。07年5月第三回みよし会『傾城阿波の鳴門』どんどろ大師の場の巡礼お鶴で上村吉太朗を名のり初舞台。一般のサラリーマン家庭出身から09年12月南座顔見世で我當に入門し、『時平の七笑』の稚児松乃丸で部屋子披露。上方歌舞伎期待の俳優。

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