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虎党お好み焼き店 元祖へんくつや

2013年9月23日

 大ファンの阪神の帽子をかぶり、手を振る初代女将の静子さん(右)と2代目女将の川原久子さん=広島市中区新天地の元祖へんくつや(撮影・出月俊成)

 大ファンの阪神の帽子をかぶり、手を振る初代女将の静子さん(右)と2代目女将の川原久子さん=広島市中区新天地の元祖へんくつや(撮影・出月俊成)

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 大ファンの阪神の帽子をかぶり、手を振る初代女将の静子さん(右)と2代目女将の川原久子さん=広島市中区新天地の元祖へんくつや(撮影・出月俊成)

 (続けて)

 「義母は何年か後に女一代でアパートと自分の家を建てたんです。商売をやっている人は義母に保証人になってもらってお金を借りていたそうです。義母の信用はすごいものがありました」

 ◆20歳で大津市から広島市に嫁いだ久子さんは専業主婦だったが、「へんくつや」が1980年代に倒産という憂き目にあう。

 ‐2代目女将になったのはいつですか。

 「35歳の時に突然。会社がつぶれて義母と同じで食べていくためです。それまで主人を手伝ってはいましたが、引き継ぎなしですから。子どもが小学生だから義母と同じですね。義母が『あんたやったら大丈夫』と推してくれたのもある。義母は『やめてもいい』と言ったのですが、川原家の私がしてこそ価値があると思いました」

 (続けて)

 「女将になった時、義母から『村山さん(阪神の当時監督)にあいさつに行っておきなさい』と言われた。宿舎にお好み焼きを差し入れたりしました。義母もそうやってきたんです」

 ‐阪神と強いつながりがありますね。

 「立ち退き騒動があった時、阪神の選手が遠征で来ると『へんくつや』があるか若い選手が見にきてくれた。義母と強いつながりがあり、エールを送られた。そのお返しに阪神が広島に来る時は休まず営業しています」

 ◆経営は順調だったが、2007年8月、久子さんは脳梗塞で倒れる。

 ‐阪神の関係者も心配したでしょう。

 「監督だった岡田(彰布・デイリースポーツ評論家)さんをはじめみなさんからお見舞いをいただき、助けられたんです。親子2代で阪神さんに助けられているんです。入院している時に岡田さんが(旧)市民球場に招待してくれた。車いすでしたが、ちゃんと席に着いたかみんな心配してくれた。その時、絶対復帰するんだと思いました。ここまで人を思う球団があるだろうかとも思いました。人なんでしょうけど、阪神の力は大きかった」

 (続けて)

 「お礼に『阪神タイガース希望とそして元気をありがとう』と黄色い暖簾(のれん)を作ったんです。お好み焼き屋の暖簾は赤が定番ですが、阪神カラーの黄色にしました。その暖簾は岡田さんに優勝したらあげようと思っていたんですが、あげられそうであげられなかった」

 ‐阪神の選手との思い出はたくさんありそうです。

 「カケさん(掛布雅之)が駆けだしのころは、差し入れもしてましたが夜食をうちに取りに来ていました」

 ‐和田監督も来ているそうですね。

 「選手時代からの付き合いです。誕生日のサプライズにケーキをお好み焼きにしてハッピーバースデーの歌を歌ったこともあります。私にかかわった人はみんな奥さんにも話をしてくれているんです」

 ◆今年6月には新天地店の2階にお店を持った。

 「みんなが集える店がほしかった。8月の遠征では和田監督たちも来てくれました」

 ‐今季限りで桧山選手が引退します。

 「病気になった時、リハビリ室にお見舞いに来てくれた。その時は選手会長だったかな。ヒーさんはいつも監督と変わらない立場で応援してくれた」

 ‐阪神関係者で埋まる店ですが、他球団の選手も来るとか。

 「阪神ファンの店と知っていても来てくれます。トレードや学校のつながりで紹介してくれたりして。日本ハム時代の新庄君は若手を引き連れて『お母ちゃんのこれが食べたかった』と言ってくれた。遠征で広島に来てその地のものを食べたいとという時に義母もそうだろうし、私もお母さんの気持ちで心地よく来てもらうようにしていた」

 ‐カープのお膝元で阪神を応援。抵抗はありませんか。

 「私の中で阪神にはそれだけのものをしてもらっている。別格かな。1985年に阪神が日本一になった時にはたる酒をカープファンにも振る舞いました」

 ‐今年、カープがクライマックスシリーズで阪神と戦う可能性があります。

 「行ってもらいたいですよ。阪神に勝ってもらいたいけど(笑)。大竹君や丸君、緒方コーチもお店に来てくれますし、古くは古葉(竹識)さんや浩二さん(山本)と付き合いがありました。江夏(豊)さんも来てくれました」

 ‐「へんくつや」を通じていろんな人との付き合いがあります。暖簾分けもかなりしている。

 「広島市内をはじめ他県も含めて8店かな。うちの暖簾はお金では売らない。うちで修業しておばあちゃん(義母)を分かり、私たちを知る人間が暖簾を守っている。お好み焼きを焼くだけなら見ておけば焼けます。そこに情がなかったら商品の価値がないんです。愛情があることが大事なんです。その暖簾を大事に持ってくれることが、主人と私の思いかな」

 ‐義母さんと2代目女将の店は人情味に溢(あふ)れています。

 「うちのおばあちゃん(義母)を知っている人が店に寄ってくれて『元気だね』と言ってくれると、また頑張ろうと思えるし、それが『へんくつや』の喜びなんです。歴史は繰り返されるというか、人は目に見えないもので結ばれている。人は人をつくるんだということをお客さんが教えてくれた。今の阪神との関係もそうですよね。今の『へんくつや』があるのは100歳の義母がいるからです」

 ‐最後に2代目女将として今後はどのような店にしたいですか。

 「広島のお好み焼きをもっと知ってもらいたいのもあるし、縁を大事にしたい。暖簾が続く限りそれを大切にしたいですね。1日限りの旅のお客さんであろうと、最高の価値あることをしたい。ここに来て良かったと思える店であってほしい。そのために私はほとんどお店におります」

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