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日本人俳優だけ観客撮影NGの現実

2014年3月19日

 台湾の人気俳優ピーター・ホー(左から3番目)らが登壇したステージに向けて写真撮影をする観客たち。ルールを守れば混乱ナシです=大阪・ABCホール

 台湾の人気俳優ピーター・ホー(左から3番目)らが登壇したステージに向けて写真撮影をする観客たち。ルールを守れば混乱ナシです=大阪・ABCホール

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 スペインのサンセバスチャン国際映画祭では、スターのホテル到着予定時間が新聞紙上で公表されており、ホテル前にはファンが待機できるブースも設置される。そこで米俳優ヒュー・ジャックマンもスペイン女優ペネロペ・クルスも気軽にサインや2ショット撮影に応じるから、映画祭はいつもファンの熱気に満ちている。

 ただ、最近厄介な事に、こうした国際映画祭に参加する日本人俳優の事務所や映画会社が日本のルールを持ち込み、一般人の写真撮影禁止を映画祭側に強要する例が増え、観客をガッカリさせている。そもそもハリウッドスターが撮影を許可しているのに、海外の人にとっては認知度の低い日本人俳優の方がガードが硬いなんてナンセンス。期間中、何百本も上映される中、少しでも自作に注目が集まるようPRしなければならない立場なのに、じゃあ何の為に海外へ来たのか?と理解に苦しむ。まさか「海外で大評判でした!」という記事を日本に発信するだけのために、大金をかけて来ているワケではないだろう。

 某映画会社国際部いわく、海外の配給会社は作品の評価のみならず、観客の出演俳優や監督に対する反応を観て売買を決めているのだという。日本映画が今ひとつ海外に普及しないのは、こんなところにも要因があるのではないか?と思ってしまう。大阪アジアン映画祭の景山理事務局長が言う。「映画祭でこんなスターに会ったよとか、こんな作品を見たよという口コミがSNSなどで広まることで、結果的に作品の宣伝につながると思うんですけどね」

 ただし、今回の大阪アジアン映画祭でも、クロージング作品の日本映画の舞台挨拶だけは写真撮影NGだった。「え~!?」という、観客の落胆した声が、関係者の耳に届いていただろうか。(中山治美)

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