道頓堀はシャンゼリゼ通り!?

 先ごろ、中華圏のアカデミー賞こと台北で行われた第50回台北金馬奨に参加した。最優秀作品賞を受賞したのはシンガポール映画『イロイロ(原題)』(アンソニー・チェン監督)、最優秀監督賞はマレーシア出身のツァイ・ミンリャン監督と華人のパワーをひしひしと実感した。そして、ここにも一人。映画『FLY ME TO MINAMI 恋するミナミ』(公開中)を撮り上げたリム・カーワイ監督である。

 同作品は大阪、韓国、香港を股にかけたラブストーリー。製作はシンガポール・日本合作ならば、カーワイ監督もマレーシア出身と、日本を舞台にした作品では異色のボーダレスなプロジェクトだ。

 カーワイ監督自身、大阪大学基礎工学部電気工学科卒業で日本企業に6年勤務。その後は中国・北京電影学院で映画製作を学び、初長編映画『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』は北京で撮影。続く『マジック&ロス』は香港とアジア中を飛び回る。自称“シネマ・ドリフター”(映画流れ者)。前作『新世界の夜明け』は、大阪・新世界というかなりディープな街を舞台にし、同作の評価が今回の新作に繋がったという。

 カーワイ監督は流ちょうな日本語で語る。「『新世界の夜明け』を撮った時に、大阪で撮影することの意味が分かった。映画関係者からよく“東京での撮影は難しい”と聞く。実際に映画を見ても、東京を舞台としながら実際は近郊の県だったり、地下鉄のシーンは神戸だったりもする。でも、大阪は非常に協力的で、今回は南海電鉄や関西国際空港も協力してくれた」。

 日本の慣習や常識にとらわれないカーワイ監督の発想は、俳優陣や映画人にも及ぶ。

 「タレント事務所も製作会社もすべて東京が中心。大阪発で活動することもできるし、いきなり香港や韓国へ出て、逆輸入したっていい。なにせ皆、日本国内のマーケットを見ていないんです。特に映画監督たちがそう。今回、香港は僕が中国語ができるから良いとして、韓国ロケでも、韓国語ができないけど全然不自由しなかった。なぜなら彼らは皆、英語でコミュニケーションが取れるんです。韓国の監督たちはいかに世界へ出ていくか?を考えているから、英語を一生懸命勉強しているんです。日本人は国内でビジネスが成立してしまうから、そこで自己満足してしまうのかもしれませんね」

 カーワイ監督の指摘は、ごもっとも!で刺激になる。同時に華人共通のたくましさに、敷かれたレールからなかなか踏み出す勇気が持てない日本人にとっては、敵わないな…と言う気持ちチラリ。

 だが、アジア中を放浪し続けてきたカーワイ監督も、最近は「大阪の街が一番落ち着く」と明かす。映画を2本撮影し、友人が増えたこともあるが、カーワイ監督の目から見ると、大阪はまた違った輝きに満ちているようだ。

 「日本人がミナミと聞けば『ミナミの帝王』のイメージでしょ?でも、僕はそう思わない。道頓堀なんて川があって船が流れ、フランス・パリのよう。クリスマスの心斎橋なんて、沿道には高級ブランドショップが並び、夜はライトアップがきれいで、まるでシャンゼリゼ通りですよ。そして、高速に乗って本町や淀橋へ向かうと、NYのマンハッタンに見えます。いや、コレ本当です!まだまだ大阪はポテンシャルを秘めていると思います」

 そんなカーワイ監督はこの度、大阪観光局より大阪観光特使に任命された。特使、PRがお上手ですね(笑)。(中山治美)

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