日本人俳優だけ観客撮影NGの現実

 アジアの優れた話題作を上映する第9回大阪アジアン映画祭が3月7日~16日、大阪・福島のABCホールなどで開催された。

 オープニング作品は、1931年に台湾・嘉義農林高校が甲子園で準優勝を果たした実話を描いた『KANO』。現在、台湾で大ヒット中の話題作が日本初上映されるだけでなく、主演の永瀬正敏をはじめとする監督・キャストが勢ぞろいして舞台挨拶を行った。

 チケットはわずか30分で完売したというのだから、観客の期待度が分かる。しかし何より観客を喜ばせたのは、マスコミ向けの写真撮影最中、着席したままなら一般の方の写真撮影もOKとなったことだ。司会者からの思わぬアナウンスに会場からは「やったー!」という歓喜の声があちこちから沸き起こった。実はコレ、日本で行われるイベントでは珍しいことなのだ。

 東京国際映画祭をはじめ、俳優らが登壇する完成披露試写会などでも観客の写真撮影を禁じる例がほとんどだ。その理由は一昔前なら、アイドルの顔とヌード写真などを組み合わせてネット上にばらまく「アイコラ」などの悪用を防止する為だろう。それも情報社会の主流がインターネットに移行している今、俳優の写真は拡散されているために抑止策にはならなくなった。今はさしずめ肖像権を守るためであり、会場の混乱を防止するためだろうか。

 しかし、はて?といつも思う。写真を撮りたいと思う多くの観客の心情は、有名人に会えたこの日の記念を記録したいとか、ちょっと友達に自慢したいという程度だろう。しかもプライベートを隠し撮りするのではなく、公の場に出るために完璧に着飾った姿を撮るのだから問題はないはずだ。現に、大阪アジアン映画祭でも、先の『KANO』をはじめ、台湾の人気俳優ピーター・ホーが登壇した映画『一分間だけ』(5月31日公開)の時も、皆がルールを守ったこともあって全く混乱はなかった。そもそも観客は映画なんていつだって観られるのに、この日のために労力と財力を費やして来ている。+αの特典を提供してあげてもいいんじゃない?と思うのは、筆者だけだろうか。

 少なくとも海外の映画祭で、筆者は何度もスターとファンの触れ合いから生まれた感動的な瞬間を何度も見ている。カンヌ国際映画祭は、世界最速で新作が上映される為に盗撮防止策として上映会場への撮影機材の持ち込みは厳しいが、イタリア・ベネチア国際映画祭は寛容だ。宮崎駿監督が『崖の上のポニョ』で参加した時は写真撮影はもちろん、監督自ら客席へ降りていってミニサイン会を開催してしまった。ファンはもちろん、囲まれた宮崎監督も本当に嬉しそうだった。

 スペインのサンセバスチャン国際映画祭では、スターのホテル到着予定時間が新聞紙上で公表されており、ホテル前にはファンが待機できるブースも設置される。そこで米俳優ヒュー・ジャックマンもスペイン女優ペネロペ・クルスも気軽にサインや2ショット撮影に応じるから、映画祭はいつもファンの熱気に満ちている。

 ただ、最近厄介な事に、こうした国際映画祭に参加する日本人俳優の事務所や映画会社が日本のルールを持ち込み、一般人の写真撮影禁止を映画祭側に強要する例が増え、観客をガッカリさせている。そもそもハリウッドスターが撮影を許可しているのに、海外の人にとっては認知度の低い日本人俳優の方がガードが硬いなんてナンセンス。期間中、何百本も上映される中、少しでも自作に注目が集まるようPRしなければならない立場なのに、じゃあ何の為に海外へ来たのか?と理解に苦しむ。まさか「海外で大評判でした!」という記事を日本に発信するだけのために、大金をかけて来ているワケではないだろう。

 某映画会社国際部いわく、海外の配給会社は作品の評価のみならず、観客の出演俳優や監督に対する反応を観て売買を決めているのだという。日本映画が今ひとつ海外に普及しないのは、こんなところにも要因があるのではないか?と思ってしまう。大阪アジアン映画祭の景山理事務局長が言う。「映画祭でこんなスターに会ったよとか、こんな作品を見たよという口コミがSNSなどで広まることで、結果的に作品の宣伝につながると思うんですけどね」

 ただし、今回の大阪アジアン映画祭でも、クロージング作品の日本映画の舞台挨拶だけは写真撮影NGだった。「え~!?」という、観客の落胆した声が、関係者の耳に届いていただろうか。(中山治美)

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