Be ambitious

 【2月27日】

 TOKIOの楽曲『AMBITIOUS JAPAN!』が流れると、宜野座は突如スコールに見舞われた。2つの打撃ケージに井上広大と森下翔太。両雄の奏でる快音が雨音にかき消されていく。

 Be ambitious♫

 旅立つ人よ♫

 勇者であれ♫

 懐かしい歌詞を客席で口ずさみながらサク越えを…いや、正直、数えていない。何本でもいい。数千スイングの感触を財産に本番で尊い弧を描いてくれれば…。

 大きな志を抱く阪神タイガースの1、2軍が沖縄キャンプを打ち上げた。手締めは正午過ぎ。そう聞いたので、物理的に具志川経由はかなわなかったけれど、曇りのち、雨のち、晴れの宜野座「最終日」をしっかり見届けた。 

 昼前に岡田彰布のキャンプ総括会見を聞かせてもらった。MVPは井上と大竹耕太郎だと言う。確かにこの2人、輝いて見えた。ほかにもインタビュアーから複数の質問が飛んだ。期待と、少しの心配事。岡田はすべて総括し、素直な心持ちで「70点」と採点した。

 井上、大竹のほかにも、近本光司、佐藤輝明、森下翔太、青柳晃洋、伊藤将司が代表取材を受け、カメラを向けられた。23年の「阪神の顔」となるべき面々だから、僕らメディアは彼らの声をファンに届ける。一方、2月の沖縄で派手に取り挙げられることが無かった主力もいる。

 4番、大山悠輔である。

 岡田の会見でも番記者から大山の質問は出てこなかった。対外試合で快音が響かなければ当然そうなる。でも、個人的には「良かった…」と思っている。などと書けば顰蹙(ひんしゅく)を買いそうだけど、本音だ。

 1年間に打つヒットの数は決まっている。20余年の取材の中で、歴代の大打者から聞いた「格言」めいた言葉である。

 岡田が「あいつが4番」と明言するスラッガーが、仮に2月にバンバン打ちまくれば、心配症な僕は「もう打たんでええよ、悠輔」とこぼしてしまう。

 手締めを終え、宜野座を離れる大山と少し話をした。

 体調は問題なし?

 「はい。ちょっと張りとかはありましたけど、でも、変に離脱とかなく最後までできたことが一番良かったなと思っています」

 体が一番。

 「そうですね。まあ、欲をいえば、一本きれいなヒットを打ちたかったですけど…。でも、大事なのは『一年間戦うこと』と『シーズン』なので。このキャンプでやったことを、そこでしっかり出したいと思います」

 その言葉だけで十分。

 聞けば、岡田も「2月の大山」は何も心配していないそうだ。

 この一カ月間よく眠れました?

 岡田にそう話し掛けてみた。

 「そら、よう寝たよ」

 27日間は長き143試合へ向かう滑走路である。健康と志さえ失わなければ、それでいい。

 Be ambitious♫=敬称略=

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