株主の提言。金本の予言

 【6月15日】

 阪神タイガースの親会社「阪急阪神ホールディングス」の株主総会が梅田で行われた。タイガース関連の質疑応答は前球団副社長の谷本修オーナー代行も担当。イカ焼き案件など丁寧に答えていた。

 質問には、矢野燿大の退任発言に「なんで辞める言うたんや」と厳しい指摘も向けられたけれど…個人的に共鳴した株主とのやりとりは、育成のそれである。

 株主「安易に外国人とかFAに頼る補強には反対。農業でいえば化学肥料、農薬に頼るのと同じ。土を痩せさせることになるでしょう。ドラフトで人をとり、作り、育てることを重視してほしい」

 この質問に対応した同ホールディングス取締役の秦雅夫(しん・まさお)はこんなふうに返した。

 「以前はドラフト上位で獲得した選手のほとんどが1軍の戦力として育たなかった為、過度のFAや外国人選手の補強に頼ってきた時代がありました。そのような状況を打破する為、中長期的な視点で10年ほど前から取り組んできたスカウティングやコーチングの改革が実を結んできております」

 この秦の発言に「ウソつけ」と異議を唱える虎党はいないはずだし、また、いま目の前にあるタイガースのストロングを公に知らせるいい機会になったとも思う。

 「化学肥料」に頼らない中長期スパンの人づくりといえば…。

 この度のセ・パ交流戦で青柳晃洋が3戦防御率0・00と他を凌駕し、大山悠輔が7本塁打21打点と暴れたものだから、SNS界隈でこんなことがつぶやかれている。

 アニキ、ありがとう-。

 青柳も、大山も、確かに前監督金本知憲の肝いりでドラフト指名した選手である。当時虎番キャップだった僕から言わせていただくと、虎党がそう仰るならば、もう1人、忘れていませんか?

 17年のドラフト会議で阪神が4巡目指名した島田海吏もまた金本たっての希望で獲得した選手だ。

 この交流戦といえば、島田が6月1日から10試合連続で1番を任され、4位浮上に貢献。今月の月間打率・326は彼の成長の証しであり、いよいよ覚醒の予感が漂ってきた。大山や青柳のドラフト秘話は当欄で何度か触れたことがあるけれど、では、金本が5年前になぜ島田を欲したのか。当時を振り返れば、監督・金本は口癖のようにこんなことを語っていた。

 「とにかく、素材だよ」

 素材…アマチュアの表舞台で今まさに活躍する選手のそれはもちろんだが、金本が中長期視野でリクエストしていた「改革」とは…

 「打つ、投げる、走る、すべて無難にこなせそうな選手よりも、肩がめっぽう強いとか、足の速さは誰にも負けんとか、体の強さ、投手ならボールの強さとか…素材重視で選手を獲って育てないと」

 中学時代、陸上競技全国大会の100メートルで桐生祥秀を破った島田の快足こそ、金本の求める秀でた一芸。そういえば、かつて谷本は僕に「金本の慧眼」についてこう話していた。「島田くんは金本さんの予言通りに…」。

 この続きは次回。=敬称略=

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