【記者の視点】冨安、壁になった 森保監督の“種まき”大一番で“芽吹いた”

 「アジア杯・準決勝、日本3-0イラン」(28日、アルアイン)

 2大会ぶり5度目のアジア杯制覇を目指すサッカー日本代表は、準決勝・イラン戦(アルアイン)に3-0で勝利して、優勝した2011年大会以来となる決勝戦へと駒を進めた。イラン戦までは、全試合で1点差勝利と苦しみながら勝ち抜いてきた森保ジャパンだが、FIFAランク29位とアジア最上位の強敵を相手に、出色の試合運びで完勝。そこには、2得点のエースFW大迫勇也(28)=ブレーメン=の復帰だけではない、DF冨安健洋(20)=シントトロイデン=の躍動、大会を通じたチームの成長が見えた。

  ◇  ◇

 大人と子供、賢者と愚者-。イランとの準決勝では、精神面の成熟度で彼我の差は大きかった。象徴的なシーンは先制点。相手DFとの交錯でMF南野が倒れると、イランの選手たちは笛が鳴る前から、即座に主審に抗議した。多くの選手がセルフジャッジでプレーを止めた“ツケ”はどこまでも大きく、試合の流れを大きく左右したFW大迫のゴールにつながった。

 兆候は開始直後から散見された。立ち上がりからイランの選手たちはいら立ちを蓄積していった。対する日本は、苦しみながら勝ち進んできた「取りこぼせない戦い」から解放。開始から高い集中を保って冷静に試合を進めていった。アジア勢には公式戦39連勝中で“横綱相撲”が当たり前だったイランの歯車は、徐々に狂っていく。そして2-0となってからは自滅へと走った印象がある。

 まるで、これまでの親善試合で見せたような会心の試合。今大会のベストゲーム。それは森保監督が“種”をまき、我慢強く育ててきたことと無縁ではない。トルシエ元監督以来となる、五輪世代との兼任監督は、MF堂安やDF冨安といった若手を積極的に起用。その姿勢は初の公式大会となるアジア杯に入っても変わらない。経験豊富なW杯メンバーではなく、未来への先行投資となる若手をピッチに送り続けた。

 最大の収穫は、この大一番で“覚醒”した冨安。開幕2戦目のオマーン戦後には「手応えはまったくない。すべてが後手後手だった」と反省ばかりが口をついていたが、親善試合とは全く空気感の異なる公式大会で、1点差での勝利を重ねてきたことで確実に成長した。

 イラン戦では相手エースのFWアズムンとマッチアップ。AFC発表のデータでは、アズムンが90分間で記録したデュエル(一対一の攻防)の勝率はわずか31・8%と冨安の完勝だった。「20番(アズムン)が危険な選手というのは分かっていた。僕だけの力ではないと思っています」。MF南野、堂安も攻守両面で奮闘するなど、DF長友、吉田ら豊富な経験を持つ選手と若手は、大会6戦目でがっちりとかみ合った。

 試合後の公式会見。これまでの戦いから変化したポイントを問われた森保監督は、真剣な表情で語った。「逆に教えていただきたい。何が変わったかと…」。マネジメントを変えないことで、チームを進化させる。ただ、それはまだ“花開いた”というより“芽吹いた”という表現が適切だろう。アジアの王座を争う決勝では、さらなる成長を見たい。(デイリースポーツ・サッカー日本代表担当・松落大樹)

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