【野球】スカウト熱視線、完全試合達成の水戸啓明・中山優人ってどんな選手? 20校近くの強豪から誘いも「そこで勝つのはおもしろくない」元中日の指揮官も期待
高校野球・茨城大会の4回戦が21日、ノーブルホームスタジアム水戸などで行われ、水戸啓明が第2シードの水城を下して8強入り。プロ注目の最速146キロ右腕・中山優人投手(3年)が9回14奪三振で完全試合の快挙を達成した。
マウンドに上がると目を引くのは、スラリとした美しい立ち姿だ。「意識しているわけではないですけど、小さい頃からあまりフォームは変わってなくて、いろんな人にキレイと言ってもらえます」。そう照れ笑いする中山は、身長182センチ、体重65キロとまだ細身ながら、スカウト陣も将来性に期待を寄せる存在だ。
今大会初登板だった18日のつくば国際大高戦では救援で1回2奪三振0封。「球速にはこだわらずに、テンポやコントロールを意識した」と全球直球を投じ、上々のスタートを切った。阪神などの幹部クラスを含む6球団12人のスカウトが視察。球質の良さや、均整の取れたフォームなど、潜在能力の高さを評価する声が上がった。
野球好きの祖父の影響で幼少期からプロ野球選手が夢だったという中山。中学時代は水戸青藍舎ヤングでプレー。高校進学に際しては常総学院など県内強豪校に加え、沖縄・興南など20校近くから誘いを受けたというが、「そこに行って勝つのはおもしろくないなと。自分が勝たせて啓明を有名にしたいなと思いました」と熱い思いで入学した。
力強い言葉とは裏腹に、優しげな表情や落ち着いた口調からは穏やかな性格が伝わってくる。チームを率いる、同校OBで元中日の春田剛監督(38)も「それで助かっているというか。どうしてもウチは『中山のチーム』と見られちゃうので、傲慢だとチームがまとまらないと思う。バックがエラーしても気にしないし、教室にいても、どこにいるか分からないくらい(笑)」と明かす。「3年生になって後輩の指導もできるようになりましたし、本当に大黒柱」と信頼を置く存在だ。
野球の面でも「止まったことがない、伸び続けているので、この夏に覚醒してくれたらうれしい」と期待を寄せる。体重は増えにくいタイプではあるが「ああ見えてご飯は夜に1キロとか食べる。トレーニングも結構できるようになってきて背筋もついてきた」と指揮官。入学時は120キロ台だった直球も、現在は最速146キロにまで成長。昨年まで10キロほどあった初速と終速の差も今年は極めて少なくなっており「真っすぐを狙い打ちされるとバカーンと打たれていたのが、今年は分かっていてもドン詰まりさせられる」と成果が表れつつあるという。
中山が、プロに進む選手のレベルを体感した出来事がある。1年時に夏の県大会でグラウンド補助を務めた際、霞ケ浦の当時のエースだったロッテ・木村が完投する姿を目の当たりにした。くしくも同じ「優人」という名前。右腕は「こういう人がプロに行くんだなと実感しました」と回顧する。
2年の時がたち、自身もドラフト候補と呼ばれるまでに成長。昨冬から12球団のスカウトが度々視察に訪れており、漠然としていた進路もプロ一本へと気持ちが強まった。春田監督は「そこから自主練習も人一倍やっていて、取り組み方も違った。後輩たちがそれを見て、『中山さん、中山さん』とついて行ってくれてる」と目を細める。ただ、今春県大会後には、しかったこともあったという。
「良いところを見せなきゃと力んでいた。みんな勝ちに向かってやっている時に、彼だけプロに向かっている感じで。2人で1時間くらい話して、『甲子園に行きたいです』という気持ちを確認しました」
今は高校野球最後の夏に全力を注ぐ。「強みは9回を投げても球速が落ちないことと、コントロール」と中山。同校の甲子園出場は、前身である水戸短大付として出場した1996年夏と2002年春の2度だけだ。「自分が勝たせる気持ちを強く持って。しっかりコースに投げて、点をとられたとしても、崩れずに持ち味を出し続けられるように心がけたいです」。ひと夏の間にも、さらなる成長の余地を秘める大器。現校名初の甲子園出場を目指し、堂々と腕を振る。(デイリースポーツ・間宮涼)
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中山 優人(なかやま・ゆうと)2007年4月18日生まれ、18歳。茨城県鉾田市出身。182センチ、65キロ。右投げ左打ち。小1から当間スポーツ少年団で野球を始め、鉾田南中では水戸青藍舎ヤングに所属。水戸啓明では1年春からベンチ入り。50メートル走6秒3、遠投115メートル。変化球はスライダー、チェンジアップ、スプリット、カーブ、カットボール。中学時代は部活動で陸上部に所属し800メートル走で活躍。





