【芸能】麻布十番を愛し愛された志村さん

 ザ・ドリフターズ時代から笑いを届け続けてくれた希代のコメディアン、志村けんさんが新型コロナウイルスによる肺炎のために亡くなって、2週間が過ぎた。大の酒好きで知られたが、“夜の街”としてお気に入りだったのが、若かりし頃に住んでいた麻布十番。とんねるず・木梨憲武はインスタグラムで、「番組の作り方!芸能方面のすごし方!酒の飲み方、たくさんの事を教えて頂きました。いまだ信じられません。ありがとうございました。麻布十番会長!!」と悼んだほどだ。

 麻布十番に点在する、志村さんの行きつけの店を何軒か取材したが、いずれも温かな人柄を感じられた。イタリア料理店「クチーナ ヒラタ」は、30年前からの常連。亡くなる1カ月ほど前にも来店していた。オーナーシェフの町田武十さんは、訃報が伝えられた直後は気持ちの整理がつかず取材を断ったというが、「お店を好きでいてくださった方なので」と沈痛な思いをこらえ、対応してくれた。

 「静かにお食事をされるんですが、かなりオープンな方で、お客さんから写真を頼まれても、ニコニコされて一緒に撮られてました」。窓際のテーブルが“指定席”で、ワインと「ウニのリゾット」が定番オーダーだったといい、「けんさんにもう召し上がっていただけないと思うと、(訃報が伝えられた)昨日は調理中に涙をこらえるのに必死で…」と早過ぎる別れを悔やんだ。

 和菓子屋「紀文堂」の店主・須崎正巳さんは、同年代の志村さんと40年来の飲み仲間で、昔は自宅に招かれて飲むこともあった。「『ドリフのコントを作るのが大変なんだ』と話してました。5人で楽しみながら、練り上げている感じで。『(早食いネタの)スイカの裏側は薄くなってて、(果実が)少ないんだよ』って裏話を教えてくれたり」。志村さんの素顔は「努力家」で、プライベートな時間にも“お笑い論”を語っていたという。

 志村さんが以前、通い詰めているとテレビで紹介していたガールズバーは、「もう一度、『だいじょうぶだぁ』と言ってほしかったです。本当に悲しい…たくさんの笑いをありがとうございました」という追悼メッセージを店外に掲示。作家・高橋源一郎氏は焼き鳥屋「あべちゃん」での、心温まるエピソードをツイッターで明かした。高橋氏の妻とまだ幼かった子どもが、テイクアウト購入のため、列に並んでいたときのこと。店内が混んでいたため、待ち時間が長くなってしまい、ジレた子どもが大声を出してしまったという。

 「座っていた客のひとりが怒ることもなく『どうしたの?』と訊ねた。子どもは『いつまでたってももらえない』といった。『そうか』とその人はいった。すぐに、持ち帰りの客の列が動きはじめた。どうやら、その客が、自分たちの分を譲って持ち帰りの客を優先するよういってくださったらしい」

 話はそれで終わらない。“その客”は列に並んでいた人たち全員の焼き鳥代を、こっそり払ってくれていたという。もちろん、“その客”の正体は志村さんである。

 東日本大震災後には志村さんはダチョウ倶楽部らを引き連れて、町内で募金活動。復興支援に尽力しても、「商店街からという形で被災地に届けて」と自分の名前は伏せたという。志村さんが愛して、愛された麻布十番には、人情秘話がいくつもあった。(デイリースポーツ・丸尾匠)

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