【野球】3割打ったら聞きにこい 自主トレ中に落合博満から浴びせられたある言葉

 自主トレの時期になると、ロッテ、中日、巨人、日本ハムで活躍した落合博満(68)のあの言葉を思い出す。

 2022年も明け、NPB所属の日本人選手たちはさまざまな場所で2月1日のキャンプインの備え、自主トレを開始する時期になっている。ここ数年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、海外はもちろんのこと沖縄を含めた日本国内を訪れることは難しく、所属球団の施設を使っての自主トレを余儀なくされるだろう。

 私は数多くの球団の自主トレ取材をし、いろいろな出来事に遭遇した。確か落合が巨人に在籍していた1995(平成七)年の1月もだったと思う。主力選手がよみうりランドにある室内練習場でマシンを使った打撃練習などを開始しており、その取材のために室内練習に入り口にあるベンチに座っていたときだった。

 その日は、なぜか室内練習場で取材をしていた記者が極端に少なかった。確か私ともう1人、2人だったと思う。人数が少なく、座るスペースが空いていたこともあるのだろう。いつもはあまり口を開かない落合がなぜか雑談に応じてくれた。

 そこで打撃についての質問を試みた。その際、落合の口から予想もしない、「なんでぇ~。お前たちプロ野球で3割打ったことがあるのか?」という言葉が飛び出してきた。

 「なんでぇ~」というのは当時の落合の口癖。「なんで、そんなことを聞くんだ」という質問を遮るときに使う決まり文句で、それは想定内のセリフだった。だが、その後に続く「プロ野球で3割打ったことがあるのか?」という質問に質問で返すパターンは初めてだった。

 その意図が分からないまま「記者なので、もちろん打ったことがありません」と間に抜けた返答をすると、落合は諭すようにこう話を続けてくれた。

 「プロ野球で3割を打ったことにない人間に野球の話をしてもしょうがないだろ。3割を打ってから野球の話をしにこい」-。

 この発言に、それまで担当してきた球団の、何人もの選手にいわれた、「一番嫌いな記者のタイプは“僕も学生時代に野球をやっていました。その経験によると”と前置きして質問してくるやつ。何が分かるんだと頭にくる」という言葉を思い出した。落合のセリフもまさにそうだった。

 プロ野球記者をやっていれば、年間でオープン戦、公式戦、練習試合、紅白戦を含めれば200試合ぐらいは生の試合に触れる。記者生活が10年、15年に及べば2000、3000試合にもなる。「自分はみるプロ」などと変な自信が芽生え、首脳陣や選手に大上段に振りかぶった質問を浴びせることになる。そんな質問ばかりぶつけていては、本音など引き出せない。さまざまなテクニックが必要になってくる。

 落合の言葉に、頭をバットで殴られたような気がした。もちろん野球記者としてルールや野球協約の知識は必要だ。だが、落合にあの言葉を浴びせられて以来、質問する内容は多少工夫するようになったと思う。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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