関本が涙…3度舞い「帰ってきたい」

 「阪神0-6広島」(4日、甲子園球場)

 いつもは聞こえない歓声が耳に届いた。八回2死一塁。代打で迎えた公式戦最終打席。「今日は聞こえた」。気がつくと、目の前では黄色く染まったスタンドが揺れていた。「ありがとうございます」。阪神・関本は一言つぶやき、打席に立った。

 いつもの準備をこなした“代打の神様”も、いつもと違う心境に冷静さを失っていた。「狙い球とかを注意して打席に入るけど、ぶっ飛んでいた」。黒田の6球目をたたいて投ゴロ。結果は出せなかったが、九回は和田監督の配慮で三塁の守備にも就いた。

 セレモニーでは「最後の一打席まで熱く大きな大声援、ありがとうございます」とあいさつ。19年間、支えてくれたファンに精いっぱいの感謝を表現した引退試合だった。

 もう一つ、支えがあった。家族だった。02年に妻・恵さん(35)と結婚。2人の子宝にも恵まれ、3人の存在が原動力となった。

 恵さんは「家ではイライラしたところも見せませんし、野球の話もしません」。堂々とした一家の大黒柱の夢は、2人の息子が「父親がプロ野球選手」と分かるまでプレーすることだった。

 04年から主力選手となると、息子はテレビに映る父を見て、自然とボールを握っていた。2人の息子は現在、野球チームに所属。関本は家で野球の質問をされると、コーチ役となる。恵さんは「子供が『教えて』と言うと、嫌な顔をせず、全てを教えていました」。自分の後を追うように成長する子供の姿が、また励みとなった。

 ただ、ベテランもケガには勝てなかった。リーグ優勝を逃した無念さもある。大好きな野球をやめる寂しさもある。セレモニーでは、昨季までチームメートだった広島・新井に花束を贈呈されると、涙を流した。

 それでも仲間に背番号と同じ3回、胴上げされると前を向いた。「これから始まる第2の人生は、皆さんの支えていただいた気持ちを胸に、必死のパッチで歩んでいきたいと思います。そして、またいつかこの甲子園に帰ってきたいと思います」。勝負師は笑顔で甲子園を去った。

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