歴史的独走V 近本に見た阪神の強さ 内田順三氏が解説「最初からファウルを打ちにいく打者はバッティングとは言えない」
プロ野球のセ・リーグは阪神が圧倒的な強さを見せつけ、2年ぶりのリーグ制覇を果たした。優勝の要因にはバッテリーを中心とした守り、主砲・佐藤輝の覚醒などさまざまなことが挙げられるが、デイリースポーツウェブ評論家・内田順三氏は攻撃における四球数の多さに注目。なぜ阪神の各打者は四球を選べるのか、解説する。
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今年の阪神はバッテリーでしっかりゲームを作り、野手も1番から5番を固定できた。そして、攻撃では岡田前監督が奨励していた四球の数も断トツ。藤川監督も常に先手を奪う戦略で、相手にプレッシャーをかけていたね。
シーズン終盤に近本が38打席ノーヒットと騒がれていた。ただ、その間の打席を見ると、9つも四球を選んでいる。誰だって早くヒットを打って、胸のつかえを取りたいもの。でも早打ちをしてヒットを打とうするわけでもなく、しっかりボールをセレクトする。1番バッターとしての役割をしっかりこなしていた。
打率・300と・299ではその差が大きいように言われるが、実際には安打1本か2本だけ。落合もよく「4タコを3タコにする」と言っていたが、打者にとってひとつフォアボールを選ぶというのは、非常に重要なことだよね。
セ・リーグの四球ランキングを見ると、トップの大山から上位にズラッと阪神の打者が並んでいる。前提として言えるのは各打者の打撃の技術が高いからで、1、2番を打つ近本や中野は、打ちにいきながら四球を選ぶことができる。最初からファウルを打ちにいく打者もいるが、これはバッティングとは言えないね。2人は打ちにいきながらカットできる。そして初球から打ちにいかず打席でプランを立てられることも、四球の多さにつながっている。
2人とは異なるが、3、4、5番を打つ森下、佐藤輝、大山は相手に恐怖感を与えながら四球を選んでいる。チームとして四球を選ぼうというのが浸透していて、ボール球を振って相手を助けることも少ない。同じように四球の多い坂本を含め、投手にとっては嫌な打者が並んでいるね。
最後に藤川監督の采配についても触れておきたい。各チーム主力にけが人が出て苦しむ中で、時には選手に休養を取らせながら離脱させることがなかった。彼がテレビ解説をしている時に抑え投手でこんな野球観を持っているのかと感心していたが、メジャーや独立リーグ、全ての経験が生きているんだろう。色々なチームで学び、マネジメント力がたけていた。常に一歩先を読みながら戦略を打つ、素晴らしい戦いぶりだったね。
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