阪神・坂本の矜持 FA権取得も残留「良かったって思えるように」正捕手への思い、プロ野球人生の原点明かす
「阪神2-0広島」(7日、甲子園球場)
阪神を2年ぶりのリーグ優勝に導いた、坂本誠志郎捕手(31)がデイリースポーツに独占手記を寄せた。国内フリーエージェント(FA)権を取得しながら、「タイガースで、もう一回やり返したい」と残留を選んだシーズン。プロ10年目で数々のキャリアハイの成績を残した。プレッシャー、正捕手と呼ばれること、プロ野球人生の原点など、飾らない言葉で胸の内を明かした。
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優勝は何回やっても、うれしい気持ちは変わらないね。個人的にはFAで残って、1年目で何とか藤川監督を胴上げしたいという思いがずっとあった。こうやって、たくさん試合に出させていただいて、経験させていただいて、また優勝できたのは自分にとって大きいね。
自分で決めて阪神に残ったし、もう1回優勝したいなという思いは強かった。チームに残って良かったと思うかどうかよりも、良かったって思えるようにしないといけないと思ってやってたから。順番が違うかな。良かったと思えるようにしたい、しないといけないというのから入ってたから。その分、自分に向けるプレッシャーとかもちょっとあったかな。
2年前は梅野さんとの併用。ずっと2人でやってきた。それもいい経験だった。その時は梅野さんが最後にけがをしてしまって、それからは出続けたけど、今年は出場機会が増えて、こういうチーム状況を作れたことは、個人的に「こうありたい」と思ってやってきた。うれしいとかじゃなく、自分の中での充実感というのは、すごいあるんじゃないかな。
正捕手かどうかは、正直どうでも良くて。そんなことは考えてない。ただ自分が出続けたい。出て自分の思ってること、考えたりしてることを野球で表現して、形、結果にしたいという思いはずっとあった。そういうふうに今も思ってやってる。
それで出続けてるのが正捕手と言うのなら、そうなのかもしれない。けど、それが正捕手かどうかというのも、正直わかんないから。試合に出たいというこだわりはある。だけど、正捕手って言われること、その言葉に関しては自分の中ではピンときてないかな。
残留は自分で選んだから言い訳もできないし、逃げもしない。自分のせいで負ける試合もある。自分がちょっと貢献できたなと思って勝てる試合もあるし、貢献できても負ける試合もあるし。
藤川監督からは「自分が思ってるようにやってくれ。自分で考えて、発信して、表現して、やってくれたらいい」と就任当初から言ってくれた。それを自分の中で表現できる環境と場所をいただけた。そういう場所がない、環境がないっていう選手もたくさんいるだろうし、すごい幸せなことだと思う。「やってくれ」と言われたからには、自分が表現したいだけじゃなくて、それを形に、結果にしたいっていう思いはずっとあった。
ベストプレーか…。うーん。あんまないかな。やっぱり打たれた記憶が強い。いっぱい出てくる。これも打たれたな、これもいけると思ったのに打たれたなとか。その後のなんでそういうふうになっちゃったか、こうしとくべきだったなという確認はできていたから、それが一番良かった。自分の頭の中には打たれた場面の方が残ってる。
僕のプロ野球人生の始まりは、プロ初スタメンで能見さんと組んで、2イニングで6点取られて代わってるから。その試合が全てのスタートだから。忘れることないね。ずっと残ってる。何もわかってなかった。何もわからずやってた。その頃とはやってる野球が違うかな。
それから大事にしてきたことか…。うーん。いっぱいあるけどね。ほんまに言い方は汚いけど、ずっと何かあるたびに「クソッ!」と思ってた。環境のせいにはしたくなかったから。言い訳したくないから。その後、3年目から5年目ぐらいかな、試合の数もあまり出てなかった。
その時も、僕は自分で自分の剣を研いできたっていう自負はあった。
正直、そこだけは負けたくないと思った。環境のせいにしたくないというのは、そこだし。誰かがいるから出られないとか、使ってもらえないから結果が出ないじゃなくて。そんなことを言ってる暇があったら、僕は自分の剣を研ぐことに集中した。それだけは、誰にも負けたくなかった。
ただ、ここで終わるわけじゃない。複数年契約を組ましてもらって、この1年のためだけに残ったわけじゃない。また違った立場で優勝できた。今度は違った別のものが見えてきた時にまた苦しむだろうから。今度はそれに対して、どういう風にやっていくかという、準備、楽しみとかがあるかな。
1度、連覇したいって入ったシーズンでできなかった。もう1回、そこにチャレンジするチャンスがある時には、全力で取りにいかないといけないと思う。野球人生と一緒で、何回もチャンスがあるわけじゃない。でも優勝したから、このままじゃなくて、それを越えようとしてくる相手を上回るだけの準備と、もう1回、野球の技術を磨かないといけない。
それは自分だけじゃなくて、チームとして、みんなにどれぐらい考えてもらって、浸透させて、野球ができるか。チームで置かれている立場を考えると、伝えていかないといけない。そこは意識するね。タレントもいるし、能力もあるし、十分に常勝軍団になれるものはあると思ってる。ここからはがめつく、みんなでいってもいいかなと思うよ。まだまだ、これが「始まり」だって思えるようにやっていきたい。(阪神タイガース捕手)
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