“穂積の後継者”久保が逆転新王者 前歯折られ、プロ初ダウン…それでもTKO勝ち

 「ボクシング・WBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(9日、エディオンアリーナ大阪)

 同級8位の久保隼(27)=真正=が王者のネオマール・セルメニョ(37)=ベネズエラ=を11回5秒TKOで下し、世界初挑戦で王座を奪取した。日本ジム所属の男子選手として10人目の世界王者となった。7回にプロ初ダウンを喫したが、11回開始時に戦意喪失したセルメニョが棄権した。東洋大時代にドロップアウトし、公園でのホームレス生活も経験した苦労人。真正ジムとしては、昨年に現役を引退した元世界3階級王者・長谷川穂積氏以来の世界王者。久保が名実ともに後継者となった。

 何が起こったのか、誰もが理解できなかった。11回開始直後、王者は立ち上がることなく、突如グローブを外し始めた。レフェリーが両手を交差する。久保が新王者として、名実ともに“長谷川穂積の後継者”となった。

 「終わって良かった」。久保は安どの第一声を吐き出した。左ボディー中心に組み立てたが、7回に左右のフックを浴びてプロ初のダウン。「ダウンもイメージしておけ」という長谷川氏の言葉を思い出し、カウント8まで休んで窮地を脱した。10回までの採点では1-2とリードを許した。前歯も折られたが我慢比べに勝利。「長谷川さんのおかげ」と頭を下げた。

 父憲次郎さん(51)と母知美さん(51)に、誰よりも感謝を伝えたかった。「育ててくれてありがとう」。南京都(現京都広学館)高ボクシング部の送別会以来、人生2度目の両親への「ありがとう」だった。勝たないと伝えられない。その思いが久保を支えた。

 アマボクサーだった父の手ほどきを受け、中学2年からボクシングを始めた。05年2月14日。父の“ボクシング・ノート”はその日から息子の東洋大卒業まで続いた。人知れずネットにブログをつづり、息子のボクシングを伝え続けもした。

 大学3年の冬、久保はボクシングに嫌気がさし、京都の実家に戻った。父が認めるはずもなく、親子喧嘩(げんか)の末に家を飛び出し、真冬の公園で約1週間のホームレス生活を送り、母方の祖母ミエ子さん(75)の自宅にも転がり込んだ。それでも自分にはボクシングしかないと体を動かしていた時、真正ジムの山下会長が手を差し伸べてくれた。

 「一度ドロップアウトした人間がチャンピオンになれるほど甘くはない。それを覆すだけの努力をしたということ。息子ながら尊敬する」。父は頼もしそうに息子を見つめた。

 これまで打ち合うことを恐れていたが「打ち合える自分に成長した。長谷川さんの言うことが理解できた」。次戦は指名試合が濃厚だが、IBF同級王者小国以載との対戦を熱望。“長谷川の後継者”と呼ばれることを「恐れ多い」と謙遜するが、その領域へ確かな一歩を踏み出した。

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