元阪神、オリックスの野田浩司さん “奪三振男”は神戸で肉料理店経営

自慢の地鶏などを自ら焼く野田浩司氏=神戸市
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 神戸・三宮駅から徒歩5分弱。移り変わりの激しい繁華街の一角に、野田浩司さん(50)が店を構えて13年目になる。

 店名の「まる九」は、九州・熊本出身の野田さんがうまいもんをまるごと提供しようと命名。熊本産の馬刺しに加え、豚しゃぶ、地鶏の炭火焼きが看板メニューだ。店での仕事は「料理を作る以外は全部」。厨房は店長に任せているが、週に何度か店に出る日は注文受けからレジ打ち、テーブルでの野球談義まで、186センチの体をかがめて奮闘している。

 ヤクルト監督時代の野村克也氏から「お化け」と評されたフォークを駆使して阪神、オリックスで活躍した右腕。95年には1試合19奪三振の日本記録も作った。そんな右腕が飲食店経営者に転身したきっかけはプロ野球のコーチ業が「合わなかった」からだった。

 現役引退後、04年にオリックスの1軍投手コーチに就任。しかし最終戦翌日に当時の中村勝広GMに「辞めます」と申し入れた。驚いたGMから「何でや、何するんや?」と聞かれ、返したのが「飲食店やります」の言葉。「選手は年も近いしかわいかったけど、自分の意見を押し殺さないといかんかった。(商売は)良かったら自分にかえってくるし、悪かったら自分で責任を取ればいい」。潔いまでの決断で、漠然とあこがれていた夢の実現にかじを切った。

 うまいと自信を持って提供できる味を求めて熊本、宮崎、鹿児島に何度も足を運び、これだと思う味に出合えば頭をさげて教えを請うた。「絶対に食べてもらいたい」という馬刺しは、現役時代から好んで食べていたファーム産にこだわった。そうして生まれた数々のメニューは開店当初から変わっていない。

 プロ野球のコーチ業からは身を引いたが、野球とは、ずっとつながっている。開店と時を同じくしてアマ野球に携わることになり、現在は、NTT西日本などで臨時コーチを務める。チームはぎりぎりで都市対抗出場を決めたとあり「野球で久しぶりに泣いた。おめでとうやけど、ありがとうの気持ち。やっぱり野球は面白い」としみじみ。

 15年に急逝した中村GMは開店当初から熱心な“常連”でいてくれた。「酔うと、お前は俺がトレードに出したから成功したんだぞって話になって、(自分も)そうです、そうですって言って」と阪神時代からの恩師を懐かしむ。

 一時期、目標に掲げていた店のチェーン展開は「個人では難しい」と軌道修正。オリックスへの移籍によって縁ができた神戸で店を守りつつアマ野球の指導、野球解説者を続けていくつもりでいる。「お客さんに『ホンマにうまいもん出しとるな』って言ってもらえるとうれしいし、(店と野球と)自分で調整してスケジュールを決められるのは幸せなこと」。そう言って柔らかな笑みを浮かべた。(デイリースポーツ・若林みどり)

 ◆野田浩司(のだ・こうじ)1968年2月9日生まれ。熊本県出身。87年のドラフト1位で阪神入り。92年に松永浩美氏とのトレードでオリックス入り。93年に17勝5敗で最多勝。95年に1試合19奪三振のプロ野球記録。2000年引退。通算成績は89勝87敗9セーブ。05年から3年間、ニチダイ投手コーチ。現在はNTT西日本、同志社大準硬式野球部でも指導中。

 ★「まる九」(電話078・321・0474、営業は17時から)

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