デーブ大久保氏 居酒屋オーナーとして見つけた本当の幸せ…波乱万丈の人生

店のフロアではお客さんと気さくにふれ合う大久保博元氏=東京・新橋の「肉蔵でーぶ」(撮影・金田祐二)
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 JR新橋駅から徒歩5分。“サラリーマンの聖地”と呼ばれる街に、元楽天監督・大久保博元氏(51)の店がある。「おっ!イケメンさん、いらっしゃい!」。店内ではオーナー自ら明るく接客も行い、豪快な笑い声を響かせる。

 楽天監督を退任した翌年の16年3月、居酒屋「肉蔵でーぶ」を開業。3年目に突入し、テーブル3卓とカウンター13席は連日ほぼ満席だ。野球評論家の仕事やプロゴルファーとしての活動なども合わせて多忙な日々を送っており、「おかげさまで精いっぱい仕事をやっている。幸せですよね」。波瀾(はらん)万丈の人生を送ってきたからこそ、言葉に実感がこもる。

 3歳で父が他界し、母子家庭で育った。幼少期、母・友美子さんが「嫌いだから」という理由で肉が食卓に出なかった。実際は貧しさから「肉を食べさせられなかった」ことに、後で気づいた。「だから、飯にはいやしくてね」。現役時代は遠征先でうまいものに出会う度、「いつか、自分の店で提供したい」と思うようになった。

 ユニホームを脱ぐことが決まり、心の奥にしまっていた思いを実現。メニューには、こだわりのあるものばかりをそろえた。現役時代に通った大阪の焼き肉店や博多の屋台などで、材料の仕入れ先やレシピを勉強。ステーキやおでん、つけ麺など種類は豊富だ。

 居酒屋では珍しくない「冷やしトマト」ですら、特別な感情がある。かつて、西武コーチ時代に不祥事で謹慎処分を受けた際、嫌いだったはずのトマトのおいしさに感動。「人間って、どん底にいると何でも感謝するんだな」。その味は苦い記憶とも重なるが、メニューに加えた。

 店には野球関係者や水戸商時代の仲間、引退後に開いた少年野球教室の卒業生なども集まる。人に恵まれていることを実感することで、物欲より「人の役に立ちたいと思うようになった」という。

 テレビで不祥事や事件を起こした著名人を見る度、かつての自分と重ね合わせる。「身から出たさび。たたかれるのは当たり前」。そう思う一方で「違う自分に出会えるチャンスだぞ」と、声をかけたくなる自分にも気づく。「あきらめなかったら、人生に失敗はないと思っています」。51歳、第2の人生を謳歌している。(デイリースポーツ・佐藤 啓)

 ◆大久保博元(おおくぼ・ひろもと)1967年2月1日生まれ。茨城県出身。現役時代は右投げ右打ちの捕手。水戸商から84年度ドラフト1位で西武入団。巨人へ移籍し、95年に現役引退。通算成績は303試合、打率・249、158安打、41本塁打、100打点。2008年に西武打撃コーチ、10年に2軍打撃コーチとなったが、選手への暴力行為などを理由に解任。12年から楽天の打撃コーチ、2軍監督を経て15年に1軍監督に就任。最下位に終わり、1年で退任した。

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