【野球】今季最長9連勝を支える阪神・大山悠輔の献身 失点直後の適時打 事もなげにさばく守備の貢献度
「広島1-6阪神」(8日、マツダスタジアム)
今季最長9連勝を飾り、2位・広島とのゲーム差を今季最大の7・5ゲーム差とした阪神。試合序盤から優位に進められない状況もあるなど、完璧な試合運びができているとは言いがたいが、それでも結果として白星を手中に収めている事実が何よりも尊い。
ここに来て際立つのが大山悠輔内野手の存在感だ。6月28日のヤクルト戦から始まった9連勝中の成績は、32打数15安打、6打点の打率・469。今季最長の8試合連続安打、この日は2本の適時打で今季最多タイの1試合3打点を挙げた。
直近2戦の内容が深い。6日のDeNA戦では初回に3点を奪いながら、二回に牧の特大弾が飛び出して流れが変わりかけようとしていた。そんな三回2死二塁から、左中間を破る適時二塁打。1点を奪われた直後に奪い返した1点。1点以上の重みを伴った。
守備でも魅せた。四回、一、二塁間に飛んだ佐野の打球を滑り込むような形で捕球すると、一塁ベースカバーに走った伊藤将の胸にストライク送球。走り込んでくるスピード、一塁を踏むタイミングに合わせた100点満点のショートスローだった。五回の井上の打球も前進して難なく収めたように映るが、ショートバウンドの難しい打球だった。井上は先頭打者だっただけに、仮にはじいて出塁を許していれば、その後の試合展開が変わっていた可能性もあった。
この日もそうだった。四回に前川の適時打でリードを3点に広げながら、1死満塁から才木のスクイズが失敗に終わり、直後に才木が制球を乱して押し出し四球を与えて流れが変わりそうだった五回。1死二、三塁からリードを「2」から「4」に広げる左翼線への2点適時二塁打を放ち、七回にも相手の戦意を奪う中前適時打を放った。
取られた後に取り返されることで相手に流れを渡さず、逆に深いダメージを与える。この効果的な一打がチームの勝利を支えていることは疑いようのない事実だ。
大山は「取られた後の追加点を取れたことは良かった。流れが大事だと思うので、そういう意味では良かったんじゃないかと思います」と、流れを感じながら重圧をはねのけた一打に充実感を覚えた。
移動試合となった4日のDeNA戦では、藤川監督が「休養」と位置づけ、今季初めてスタメンから外れた。1点ビハインドで迎えた八回無死一塁から代打で登場すると、フルカウントから左前打を放って逆転への流れを作った。もし負けていれば、藤川監督の積極的休養が批判の対象になっていた可能性もある中、逆転勝利を呼んだ安打に目には見えない「流れ」を感じる。
藤川監督は4日の試合後にこう語った。
「ジャイアンツ3連戦の時の汗の量とかを考えて、ここは少し自分としても動かしてないオーダーだけど、やらなければいけないんじゃないかというところでいったんですけど。巡りよくといいますか、その後、スススと自分達の選手達が躍動したというところになると思いますね」
監督の采配で勝つ試合はペナントレースにおいて限りなく少ない。だが、指揮官が手を打った試合で勝利を収め、しかもそれが劇的な逆転勝利となれば、チームには自然と勝利への確かな感覚が宿る。今季最長9連勝で貯金も今季最多を更新する16とした藤川阪神。63試合を残すまだ前半戦で、この先に必ずひと山もふた山も訪れるだろうが、チームとしての強さ、そして指揮官の成長を感じる。(デイリースポーツ・鈴木健一)





