【野球】負けたけど誇れる試合 両リーグ最少失策の阪神守備陣が見せたファインプレーの数々
「阪神1-2ソフトバンク」(20日、甲子園球場)
延長戦にもつれ込んだ接戦を落としはしたが、対価を支払って球場に足を運んだ阪神ファンは、ある程度の満足感を覚えたのではないだろうか。攻撃面では大山の同点適時打による1得点に終わったが、村上が8回1失点と粘り、何よりも守備陣が再三の好守で試合を盛り上げた。
初回1死満塁。三遊間を襲った栗原の打球を小幡がダイビングキャッチ。素早く起き上がり、反転して二塁に送球。併殺を奪えず、先制点こそ失ったが、打球が抜けていれば1点を失ってなお1死満塁。1点で済んでいたかどうか分からない。
二回にも無死二塁から、中前に落ちようとした海野のライナー性の打球に近本が前進し、右手を思い切り伸ばしてダイビング捕球。三塁ベースを回っていた牧原大は腰に手を当てながら、あ然とした表情を浮かべていた。
立ち上がりからボールが高めに浮いていた村上はこの2つの好守に助けられ、徐々に調子を上げた。前阪神投手コーチの福原忍氏は「小幡と近本のファインプレーは大きかったですね。センター前への打球って判断も難しいですし、飛び込むのにも勇気がいったと思うんですよ。あれがあったからこそ、尻を叩かれた感じになった村上は立ち直れましたね」と解説する。
四回2死二塁では、フルカウントから内角高めの直球で空振り三振を奪い、七回2死三塁の場面では、直前にチェンジアップを暴投したにもかかわらず、同じ球を続けて海野を空振り三振に仕留めた。8勝目こそつかめなかったが、8回5安打1失点。堂々たる123球だった。
延長十回には中野が魅せた。一、二塁間に飛んだ先頭・野村の打球に対し、体が一直線に伸びるダイビングキャッチ。捕球から寸分の隙もない送球だったが、間一髪セーフ。ヘッドスライディングで出塁した野村を見ながら、中野は悔しそうな表情を浮かべていた。
1死二塁。今度は代打・嶺井の打球が二遊間を襲ったが、これも中野がダイビングキャッチし、一塁でアウトを奪った。白熱の投手戦を演出した再三の好守。残念ながら及川が踏ん張れず、代打・石塚に決勝打を浴びたが、土のグラウンドを本拠地としながら、両リーグ最少の26失策と奮闘する守備陣が輝いて見えた。
この日の敗戦で7勝9敗となり、交流戦の勝ち越しは消えた。ただ、救いは交流戦が始まる前より、2位とのゲーム差が1ゲーム広がって、3・5差と首位を堅持できている点だ。
福原氏は言う。「今日は本当にいい試合を見させてもらいました。試合には負けましたけど、こういう試合をやっていれば必ず強くなれます」。3連勝を逃した敗戦にも、あまり悲しい気持ちにならなかった理由があった。(デイリースポーツ・鈴木健一)





