【野球】なぜ中日・立浪監督はこれほど多くのアンチを増殖させてしまったのか 評論家がミスタードラゴンズの改善点を指摘

 2009年の現役引退から13年。地元・名古屋の中日ファンが願い続けた立浪監督がようやく誕生した。現役時代、中日一筋で輝かしい成績を残したミスタードラゴンズへの期待度は高かった。だが、球団史上初の2年連続最下位に沈むと、ネットを中心にアンチ立浪のコメントが目立つようになった。なぜ立浪監督は、これほどまでにアンチを増殖させてしまったのだろうか。

 異様な光景だった。引き分け以上で5位を確定できた10月3日の巨人戦に敗れた試合後のセレモニー。立浪監督が「今年のドラゴンズの成績と私への批判、不満。これをしっかりと受け止めて、秋から再出発します。私には若い選手を一人前にするという責任があります。そして来年、生まれ変わったドラゴンズを皆さんにお見せできるよう秋から全力で頑張って参ります。来年、期待して下さい」と挨拶すると、スタンドの四方から「辞めろー」「うるせえー」「頼んでねえよ」といった怒号とブーイングが飛び交う異常事態となった。もちろん、「頑張れ」「辞めるなよ」という声もあったが、近年では例を見ないファンの不満を示すセレモニーとなった。

 一番の要因は打線の決定力不足による成績不振だろう。就任会見で立浪監督は「打つ方は打てないと言われましたが、必ず何とかします」と宣言した。しかし、就任1年目にリーグワーストの414得点で最下位に終わると、チーム2位の本塁打数と打点を挙げていた阿部寿樹内野手を楽天にトレードし、京田陽太内野手もDeNAにトレード。打てる内野手と投手との交換トレードに疑問を感じるファンがたくさんいた。それでも今季の順位が浮上すれば良かったのだが、総得点390がリーグワーストの数字で最下位に終わったことから、「約束を守ってもらえなかった」、「立浪監督が進めるチームづくりが理解できない」というファンの声につながってしまった。

 阪神OBの中田良弘氏は「去年は1年目で手探りな部分があったろうけど、2年目の今年になっても、なんでこの選手を使うの?というような選手起用が多かった」と分析しつつ、「一番は立浪監督がやりたい野球っていうのが、果たして選手に伝わっているかっていうことだと思う。僕の目には、必ずしも選手に浸透しているとは思えない」と指摘した。

 中田氏は続けて、8月25日のDeNA戦で3年目の近藤廉投手が1回10失点しながら、首脳陣がマウンドに足を運ばず、62球を投げ続けさせた試合、立浪監督の発案によって試合前に野手陣への白米の提供量が減らされたとされる点についても触れた。

 「近藤の場合は立浪監督からすれば、ここを一人で乗り切ってひと皮むけてくれという無言のゲキに似た思いがあったのかもしれないけど、やっぱり間を取る必要はあったと思うし、普通に見て可哀想としか言えない。米騒動と言われている件についても、事前にヒアリング等があっての決断だったのか。そこが大きなポイントだと思う」と指摘した。

 時代は昭和から平成、令和へと移り変わった。それに伴い、指導者が選手、ファンに対する接し方も変化を遂げてきており、中田氏は立浪監督が発信力を増すことがチームを変え、ファンの不満を軽減させることにつながるのではないかと分析する。

 「ここまでの2年間を見てると、立浪監督の説明が十分だったと思ってるファンは少ないと思う。プロ野球なんだから、自分の考え、思いというものをしっかり言葉にして伝えることが一番大切。考え方を変えて折れるのではなく、言葉で説明することで、選手やファンが立浪監督の考えを理解することにつながる。仮に負けたとしても納得の度合いを増やすことができる。やっぱりコミュニケーションだよね」と語った。

 2年連続最下位に沈みながらも、観客動員数は昨年より38万人ほど増加した。WBCで侍ジャパンが世界一に輝き、4年ぶりに声出し応援が解禁されたことも要因のひとつだろうが、Bクラスが決定した終盤以降もスタンドは多くのファンで埋まっていた。やはり、ファンは選手、立浪監督に期待しているのだ。

 勝てば選手が称賛され、負ければ一身に批判を浴びる職責。3年契約の最終年となる2024年。立浪監督はファンの笑顔を増やすことができるだろうか。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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