【野球】巨人 戸郷の復活に懸ける阿部監督の思いとは 登板7試合目で今季初勝利「今後のチームにも大きい1勝」
巨人のエース・戸郷翔征投手(25)が25日のヤクルト戦(東京ド)で今季初勝利を挙げた。今季は不振に苦しみ抜き、2軍再調整を経て開幕から7試合目の登板でようやくつかんだ初勝利。その裏に、中4日での強行登板を決断してまでエースに白星を付けることを優先した、阿部慎之助監督(46)の戸郷復活へ懸ける思いがあった。
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安どと喜びと。幾重にも感情が入り交じった笑顔が印象的だった。
「長かったですけど、これから逆襲が始まります。まだまだもっと良い姿を、完封している姿を見せたいと思います」
お立ち台での戸郷の言葉を一番に喜んだのは阿部監督かもしれない。「本当に待ち望んだ1勝だったので。スゴく大きな1勝。今後のチームにも大きい1勝だと思う」と右腕をたたえていた。
この試合は異例の登板となった。20日の阪神戦(甲子園)で先発した戸郷は初回に3点を奪われるが、二回以降は立ち直りを見せる。それでも阿部監督は4回、67球で交代を決断。交代時に、戸郷へ中4日での次回登板を告げていた。そこに、チーム浮沈の鍵を握る戸郷復活への思いがある。
「やっぱりエースに一つ勝ち星が付くと、またチームも変わる。そういう意味でも勝ってほしい。エースが勝てないとチームは浮上できない」
今季の巨人は開幕直前の丸の故障離脱に始まり、立て続けのアクシデントに見舞われた。6日・阪神戦(東京ド)では主砲の岡本が守備時の走者との接触で右肘靱帯損傷となり前半戦絶望の長期離脱。その後、打線は若手の奮闘が見られるものの、5月はここまでチーム打率・231と苦しんでいる。
今週が5試合で先発の並べ替えが必要だったため、戸郷の中4日は早くからあった選択肢かもしれないが、エースが不規則な登板となる決断は簡単ではない。それでも攻撃陣の現状を考えれば、投手陣に頼る比重は大きい。戸郷に白星が付くことは浮上への最優先事項だ。阿部監督も中4日起用を「やっぱり勝ってほしい。それが一番だった」と説明していた。
指揮官は戸郷に2年連続での開幕投手を託すも、4月11日・広島戦(マツダ)で3回1/3を10失点の3試合連続KOを喫すると「示しがつかない」と右腕の2軍再調整を決めた。一方で「こういう壁にぶち当たるのは初めてだと思う。何とか乗り越えて、絶対的な投手陣のリーダーとして僕は開幕(投手)に選んだつもりなので」と揺るがぬ信頼感も示し続けてきた。
1軍復帰後も指揮官はフォーク改良の新球習得を助言するなど、エースの復活へ力を注いだ。戸郷も「成績が出ていない僕をこれだけ使ってくれて、信じてくれた監督に感謝です」と話す。
次回登板の6月1日・中日戦(バンテリン)へ「しっかり結果を残したい。初めて一つの勝ち星に対する重さを感じた。良い風に乗れる1勝になったと思う」と戸郷。すべての人の思いが生んだ1勝は、手負いの王者が進撃に転じる分岐点となるかもしれない。(デイリースポーツ・中田 康博)