【野球】近鉄12年ぶりの優勝に貢献&日本シリーズ出場 生き残りへ乱闘も覚悟「当たった方が悪いと思ってガンガンいった」

 元阪神のドラフト1位で近鉄にテスト入団した山村宏樹さん(49)=BCリーグ山梨GM=は、移籍2年目の2001年にチーム12年ぶりの優勝に貢献した。豪快な「いてまえ打線」に引っ張られて、自己最多となる7勝をマーク。ヤクルトとの日本シリーズにも出場した。近鉄時代に磨きをかけたシュートは現役を続けていく中で、新たな武器になっていった。

  ◇  ◇

 移籍元年に先発ローテ入りして6勝を挙げた山村さんは、2年目も先発を中心に登板を重ね、前年から1つ勝ち星を上積みした。この年、近鉄はいてまえ打線が爆発力を発揮。2年連続最下位から、12年ぶりの優勝を勝ち取った。

 9月26日の一戦は、球史に刻まれる劇的過ぎる幕切れとなった。94年ドラフトで阪神に同期入団した北川博敏が優勝を決める、代打逆転サヨナラ満塁弾。大阪ドームは熱狂に包まれた。

 当時、山村さんは出場選手登録を外れていたが、大阪ドームで待機していた。

 「僕と盛田(幸妃)さんと高村(祐)さんは登録をされてなかったんですが、帯同するように言われていて、夜に集められてたんです。その試合で優勝が決まらなくても、次の遠征に行っていいとなってたんです」

 功労者として呼ばれていたことで、同じ空間で劇弾を見届け、チームメートらと歓喜を分かち合うことができた。

 ヤクルトと戦った日本シリーズに出場できたことも忘れられない思い出だ。

 「試合途中で投げましたね。真中さんにホームランを打たれましたけど、唯一、チームが勝った試合で投げられたのはよかった」

 山村さんは大阪ドームでの第2戦に3番手として登板。真中満に直球を右翼席に運ばれたが、打者6人と対戦し失点1。チームは9-6で勝利したが、シリーズは1勝4敗で日本一は逃した。

 この年の打線のすさまじさを山村さんは振り返る。

 「5点取られたら、10点取れぐらいの感じでしたね。ノリ(中村紀洋)さんが言うんです。打たれるのは全然いい、四球だけやめてくれれば、もういくら打たれてもいいよ、という感じでしたね。全然ええんちゃう、と。それはよく言ってましたね」

 優勝を決めた年、チームは78勝のうち41試合で逆転勝ち。3番ローズ、4番中村に代表される超強力打線は12球団で最下位のチーム防御率(4・98)だった投手陣をアシストした。

 打線に比べて数字的には物足りない投手陣だったが結束は固かったという。「僕も中に入ったりしてたんですが、そのころのリリーフはすごく仲が良かったです。リリーフだけでご飯に行ったり、いつも一緒に行動していましたね」

 近鉄移籍後、山村さんが磨きをかけたボールがある。

 「コントロールは絶対に自信があったんですが、当時、近鉄では周りの人は投げてなかったシュートを覚えたんです。高校(甲府工)の時も、阪神の時もちょっとは投げてたんですけど、近鉄に行ってやっぱり、必要だと思って。投手コーチの小野(和義)さんと武器にしようと話をしました」

 右打者の懐をえぐるボールは、山村さんの新たな代名詞となり、18年の現役生活を導いていくことになる。

 「ガンガン(内に)にいきましたね。当たった方が悪いと思って、いってました。そうしないと残れないと思ってましたから。ノリさんも絶対(厳しく)いった方がいいと言ってくれてました。なんかあったら、出て行ってやる、そういう人が多かったですね」

 厳しい内角攻めが乱闘を招いた場合のバックアップまで約束してくれていたというのだから心強い。

 パ・リーグ球団の中ではオリックスと相性がよく登板数も多かった。メジャー挑戦前年のイチローとの対戦も印象深いという。「最後の1年間対戦したんです。この人をどうやって抑えようと考えていましたね」

 打率・387で7年連続首位打者に輝き海を渡ったイチローと11打席で対戦。9打数2安打(1本塁打)、打率・222で抑えたことに胸を張った。

(デイリースポーツ・若林みどり)

 ◇山村宏樹(やまむら・ひろき)1976年5月2日生まれ。山梨県出身。甲府工から94年のドラフト1位で阪神に入団、98年9月17日の広島戦でプロ初勝利。2000年に近鉄にテスト入団し、同年にオールスター出場。01年には優勝に貢献し、日本シリーズ出場。04年の分配ドラフトで楽天入りし、2012年に引退。プロ在籍は18年で225試合に登板、通算31勝44敗2セーブ、20ホールド。防御率5・01。今年からBCリーグ・山梨のGMを務める。

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