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コロナが奪った親子鷹の夏 元楽天・山村氏、中止発表後も仲間を励ます息子の姿に「父親として嬉しかった」

新型コロナウイルスの影響で、高校野球は春のセンバツに続いて夏の甲子園も中止が決定。多くの球児や関係者の落胆は計り知れないだろう。阪神、近鉄、楽天で活躍した山村宏樹氏(44)もその一人だ。山村氏は非常勤コーチとして山梨県の母校・甲府工で指導する立場であり、また、その甲府工でプレーする長男(3年)を見守る父としての顔も持ち合わせる。親子で目指した甲子園への道を断たれるという厳しい現実に、思いを打ち明けた。

2012年限りで現役を引退し、2014年に母校からに復帰し後輩の育成にあたっていた。「甲子園は開催できないだろう、っていう思いはありつつ、なんとか開催してほしいと願う気持ちも強かった。複雑な気持ちでずっといました」と山村氏。活動を再開できず、悶々とした日々を過ごしていたという。

甲子園を狙えるチーム。2008年を最後に夏の甲子園から遠ざかっていたが、昨年秋の山梨県大会では4強入り。準決勝では県大会を制し、関東大会決勝にコマを進めた山梨学院を追い詰めていた。「山梨学院に対抗できる力もあったし、(甲子園を)狙えた。子供たちは、甲子園に出れるって疑っていなかった。みんな信じてやってきた」と、充実していた。活動休止中もLINEのグループで選手それぞれが自主練習の内容を共有して刺激し合うなど、ブレることなく目標に向かっていたという。

指導者だけでなく親子としても甲子園を目指していた。長男が中学にあがる際に仙台から山梨に戻る。高校進学の時には「お父さんと甲子園に行きたい」と、長男自らの意思で甲府工の門をくぐった。投手だった父とは違い外野手で、センターを守るスラッガーとしての道を歩んでいた。最後の夏に賭けていたが叶わぬ夢となってしまった。それでも「中止の発表があったあとも、バットを振っていた。練習は続けている。見ていて切なくなるくらい頑張っている」と、野球に向き合う姿勢は変わっていない。

また副将として、チームを鼓舞し続けている。「主将とも話をして、同級生一人一人に電話して励まし合っていた。『甲子園はなくなったけど、県大会はあるかもしれない。あきらめず、やろう』と。そういう姿勢は指導者としても助かったし、何より父親として嬉しかった。成長したなと思う」と、目を細める。

二人三脚で野球に取り組んできた。幼少期は、ボールの扱い方、バットの振り方などしっかりと叩き込んだ。「泣きながらでも、素振りさせていましたよ」と厳しく接したこともあったという。それでも小学校3年生以降は、本人に自主性を重んじ、見守る立場へ。「野球選手の息子さえも野球やらないことが少なくない時代。親子で野球をやれるのは、10年くらいしかない。子供に背負わせるつもりはないけど、一緒に同じ夢を見られる時間って、ここ(高校野球)まで。その夢が大会もなく断たれたのは悔しい」とにじませる。

全国大会の中止は決定したが、都道府県高野連が独自大会を開催する可能性は残っている。「地方の自主開催もいろんな方針があるけど、なんとか開催してほしい。選手たちもそのつもりで頑張っている。それに野球がやらないと、冬の高校スポーツもやれなくなる。対策をして野球はやった、という前例を作って欲しい」。大きな目標こそ潰えてしまったが、残る可能性に希望を託す。

(まいどなニュース特約・服部 健二)

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