【スポーツ】5時半?6時?“早朝決戦”東京五輪マラソン レジェンド、選手の反応は

 20年東京五輪のマラソン(8月2日=女子、8月9日=男子)のスタート時間の変更が検討されている。酷暑を懸念する声が高まり、現在予定されている午前7時から、午前6時、または午前5時半への前倒しが有力となっている。さまざまな対応が求められる中、“早朝決戦”の経験のあるレジェンド、現役選手に話を聞いた。

 00年シドニー五輪女子金メダリストの高橋尚子さんは、「早ければ早い方がいい」と、選手視点では前倒しに賛成した。98年のバンコク・アジア大会。最高気温が30度、湿度は90パーセントの最悪の条件の中で、当時のアジア新記録の2時間21分48秒の驚異的なタイムで金メダルを獲得。“Qちゃん伝説”の1つとして残るレースだが、このレースは現地時間の午前6時30分スタートだった。それでも、30度を超えた30キロ以降は暑さで体の動きが鈍ったという。「レース途中で30度以上になって、陽炎のようなものが出るようになって、体の疲労がすごく大きかった」。バンコクで高橋さんはレースの4時間半前の午前2時に起床したという。早朝になることで調整がかなり難しくなりそうなイメージだが、「30分でも繰り上がるのは、選手にとっては大きいと思います。選手はどの時間でもこれと決めたら、それに合わせていくだけなので。合わせること自体は早くなっても問題はない。42キロ走り終えるまで環境が整っている方がいい」と、問題ないとの見方を示した。

 ただ、一方で運営面の不安を指摘。「もちろんアスリートファーストで決まると思うんですけど、やはりアスリートがしっかり走るためにはボランティアの人たちがそこに行くまでの交通を確保したり、また公共交通機関がどれだけ動いているのかも含めて、全体の環境をみながら決めていかないといけないものだと思う」と、強調した。

 男子マラソンで日本歴代6位の記録を持ち、今夏のジャカルタ・アジア大会で金メダルを獲得した井上大仁(25)=MHPS=は、そのジャカルタが午前6時スタートのレースだった。起床は1時半。ただ、やはり眠気が襲ってきたという。「めちゃくちゃ眠かったです(笑)。1時半に起きて、とりあえず動かしてご飯食べて、もう1回仮眠をとりました。会場について、4時半から5時前ぐらいまで眠気がピークになったんで、一回寝ようと思って、寝ました。我慢して試合走って、辛かったりしたら大変なので。だったら1回寝ようと」。日本陸連の医科学委員会は「ジャカルタの気候は、東京とほぼ同じ」と見ていた。ゴール時の気温はちょうど30度。井上は万全の暑熱対策を施して、見事金メダルを獲得した。東京五輪のスタート前倒しも「一度経験できたのは大きい。(時間の前倒しは)まあ、大人の事情はなんともいえないところなんで、そこはしっかり合わせてやるしかない。どんな状況でもみんな状況は一緒なんで、しっかり準備していきたいと思います」と、大きな問題とはとらえなかった。

 日本のお家芸復活の期待も懸かる東京早朝決戦。最終的な舞台設定はまもなく決定となる。(デイリースポーツ・大上謙吾)

 ※マラソンの開始は招致段階の計画の7時半から7時に早め、今年7月に国際オリンピック委員会(IOC)の承認を得た。だが、今夏の猛暑を受け、さらなる対策の必要性が浮上。10月末には日本医師会などが五輪組織委員会に選手の熱中症のリスクが高いとして、開始時刻をさらに1時間半前倒しするべきだとする要望書を提出。同会は昨夏と今夏にコースで気温を計測。7時開始だと30キロ以降(8時半以降)で、運動を中止すべき「31度以上」やそれに近い気温だったとするデータを提示しており、組織委では再度の変更について検討を進めており、IOCも容認する方針となっている。

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