【ヤマヒロのぴかッと金曜日】事件はすぐそばに!心のすき間を巧妙につくその手口とは!?
3週間ほど前のこと。知人のSさんの家に、一本の電話が…。ディスプレイには知らない番号が並んでいる。注意しながら出てみると「父さん?俺や」。声はガラガラ、いつもの息子の声ではない。違和感を覚えながらも「〇〇(息子の名)か?」と聞いてみた。
「うん。そう」
「どないしたんや、その声は?」
聞けば、体調を崩し、熱が出て、突然声が出なくなったという。前日にはひどい下痢でズボンを汚してしまい、大急ぎで洗ったのはいいが、ポケットの中にスマホが入っているのを忘れていた。修理に時間がかかるので代替電話を借りている。一度切って、この番号にかけ直してくれとのことだった。(この時点でSさんの携帯番号が相手の知るところに)
病院で診てもらったものの、医者はウイルスでも何でもなく、数値に異常はない、過度のストレスが原因ではないか、と言われたらしい。
「お前、そんなにストレスが溜まるようなことあるのか?」
よくよく聞くと、同僚である人妻の女性と深い仲になり、妊娠させてしまった。それが女性の夫に知られることとなり、『誠意を見せろ』と迫られた。代理人を立てて交渉した結果、400万円支払うことになったというのだ。
サラ金にでも借りて支払うしかないというので、Sさんがお金を工面すると約束し、代理人を交えて両者が和解する場所に立ち会うことにした。当日、頼まれた菓子折りを用意し、待ち合わせ場所の近鉄・大和西大寺駅へ。少し待っていると電話が鳴り、近鉄奈良駅に変更になったので移動するように言われた。
その通りにすると、今度は、先に相手の自宅に来ているので『JR京終(きょうばて)駅まで来てほしい』という。(この間、Sさんが一人かどうか、常にチェックされていたのだろう)
さらに指示に従い駅から少し歩いて行くと、言われた通りの広い道路に出た。(後でわかったが、このあたりには防犯カメラは1台もない)しばらく経って、また電話が鳴った。
「話し合いの最中に相手が激昂して揉み合いになり、倒れた拍子にケガをさせてしまった。頭から血が出ているので先に病院に連れて行った方がいいと代理人が言ってる。後はこっちでやっておくので代理人にお菓子とお金を預けてくれる?ゴトウという若い男の人がそっちに行くのでお願いします」
「ゴトウさんやな?わかった」
Sさんも気が動転していたのだろう。数分後、やって来た男性に菓子折りの袋の中に400万円を入れ、手渡してしまったという。
とても手が込んでいるが、客観的に見れば典型的な“オレオレ詐欺”じゃないかと言われるかもしれない。だが、2025年に警察が認知した特殊詐欺とSNSを使った投資・ロマンス詐欺の被害額は、過去最高だった前年をさらに1・6倍上回った。
警察庁長官は「極めて危機的。体感治安を悪化させており、新たな対策が必要」と述べたが、見えない相手から『お金』の文字が出てきたら疑う、を肝に銘じるほかないのではないか。
本人の名誉のために言っておくが、Sさんは普段は慎重で物事を深く考えて行動するタイプの男性だ。自分でも用心深いほうだと言う。そのSさんでさえ、一旦息子だと信じたらあとはなんとか力になってあげたい、との思いばかりが先に立ってしまったのだろう。
この話を聞いて、一人でも多くの方が自分ごととして用心されることを願う。
◆山本浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。
