郷に入ってはなかなか従えず!初ベトナムで感じた未来の姿 山本浩之アナコラム
【ヤマヒロのぴかッと金曜日】
おびただしい数のクルマ。さらに、それを上回る数のバイクが競い合うようにクラクションを鳴らしながら目の前を通り過ぎていく。横断歩道の前に立っていてもお構いなし、こっちが手を挙げているのに完全無視して止まる気配すら見せない。
東南アジアで今もっとも注目を集めるビーチリゾート都市・ダナンに到着したのが暮れの29日。初めて年越しを海外で過ごそうと、妻と2人で訪れたベトナムだったが、着いて早々手荒い洗礼を受けた。中国もタイもここまでひどくはなかった。
「なんやコレ。“手を挙げて横断歩道を渡りましょう”と違うんかい!」とあきれる私たちをよそ目に、この国の住人は恐れることなく普通に道路を横断して行く。それに負けじと、減速せずにすり抜けていくバイク。一つ間違えば大事故だが、渡り慣れてくると旅行者でさえ、段々タイミングをつかめるようになるのだから人間の順応力は大したものだ。
大みそか、最大の都市ホーチミンに移動したら交通量とマナーの悪さはダナンの比ではなかった。おまけに排ガスのせいか大気の状態も良くない。しかし、私が子供の頃の大阪もこんな感じだった。街が発展していく最中はどこもこんな感じなのだろう。
実際、昨今のベトナムの発展は目覚ましく、2025年の実質GDPは大規模な公共投資に押し上げられて年8%程度の成長との見込み予想も出た。この先も年10%以上の成長目標を掲げており、順調に開発が進めば、ここ1~2年のうちに国内総生産がタイを上回って東南アジアで2位になる公算が大きいらしい。何とも目覚ましい躍進だ。
1986年に始まったドイモイ(刷新)を覚えている人も多いだろう。社会主義体制のまま市場経済を導入して経済発展を目指した政策は今なお継続されているのだ。これまで行く機会がなかったが、この国は以前から注目していた。勤勉で真面目、シャイな人が多く、堅実的なところは日本人とよく似ている。
開発が遅れたのは、ドイモイまでの約30年もの間、戦争に明け暮れたためである。地政学的要素もあるが、この国は相手が大国であれ一歩も引かない。『象と蟻の戦い』と言われたベトナム戦争でアメリカに勝ち、ベトナム統一を果たした。中越戦争では、陸軍の力で中国人民軍に勝利した。
紆余(うよ)曲折あったが、ドイモイが開始してから40年かけて、ここまで経済発展したのだ。ただし繁栄の裏側で、貧富の差は拡大した。社会主義のもと共産党による一党独裁は続き、国民の基本的自由は制限されたままだ。街の至るところに旧ソ連の国旗に似た『赤地に黄色の鎌とハンマー』の旗がひるがっている。今の状況を詳しく教えてくれたガイドさんだが、体制について突っ込んで質問していたらやがて黙ってしまった。
帰国前夜、ホーチミンや首都ハノイでは新しい年へのカウントダウンに合わせて花火大会が催されるとのことで私たちもホテルの屋上から楽しませてもらったのだが、驚いたのは花火を見るためにサイゴン川周辺に集まった人の多さだった。昼間は喧騒に包まれていた周辺道路も、車とバイクの代わりに群衆が埋め尽くしている。想像以上の熱気を肌で感じた正月旅行だった。(元関西テレビアナウンサー)
◇山本浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。
