【ヤマヒロのぴかッと金曜日】美味しさをカラダに刻む“命をかけたうどん”

 無類のメン好きである。うまい店があると聞けば1人でサッと食べに行く。ジャンルは問わない。そば、パスタ、中華、麺なら何でも好んで食べる。アナログ人間だが、Googleマップだけは結構使いこなしていて、地図上に「お気に入りの店」「行ってみたい店」のマークを色分けして貼り付けてある。こうしておけば、所用で出かけた先にどんな店があるのかひと目で分かる。

 最近は口コミで高評価だとすぐに行列になってしまうので、どうしても食べたい時は食事の時間をずらして行くことになる。

 どのジャンルも正統派が好きだ。ラーメンならしょうゆベースの支那そば。そばなら、もりかざるがいい。アレンジを加えすぎたものは好んでは食べない。大抵、ひと口目はうまいが食べ終わる頃にはもう飽きてしまってるからだ。

 本当にうまいものに出会った時は、最後まで一心不乱になるものである。ひと口食べて「あ、うまっ!」そのあとは無言のまま食べ尽くす。これまでに何度かそんな店に遭遇した。

 守口にある『尾道ラーメン・山長』。MBS近くの『大阪 松下のそば』。京都・サカイの『冷やし中華(店のメニューは冷麺となっているが、間違いなく冷やし中華)』。

 そして今一番ハマっているのが、谷町2丁目の交差点を西へ二筋ほど入ったあたりにある『Udama 谷町base』といううどん屋さん。去年ラジオスタッフに教えてもらった。口当たりは滑らか、すすり始めるとしっかりしたコシと弾力感が伝わってくる絶品うどん。最初に食したときはあまりのうまさにもん絶した。エッジの効いた讃岐うどんや細くて滑らかな稲庭うどんもうまいが、その二つを兼ね備えたような最強うどんだ。お気に入りの店がまたひとつ、と喜んだのもつかの間、実はもうすぐこのうどんが食べられなくなる。

 店主は信川通さん(45)。全くの独学でうどんを打ち始め、2011年に大阪駅前第3ビルに最初の店をオープンした。3年前、今の場所に店を移し、試行錯誤の末、至高の麺にたどり着く。うどんは、打ち始めから完成まで2日間を要する。丁寧な仕事が最高のうどんを生み出しているのだが、信川さんは重度のハウスダストアレルギーと小麦アレルギーを持っていることが数年前に分かった。

 うどんをこねるときに舞う小麦を吸い込むとアナフィラキシーショックが出て重症化する恐れがあり、今年2月にはドクターストップがかかってしまった。とはいえ、毎日、うどん目当てに来店するお客さんの期待を裏切りたくない。

 以来、信川さんは防じんマスクを被ってうどんを打つという、この半年間まさに命懸けの仕事を続けてきたのだ。さすがにこれ以上無理はできないとのことでうどんの提供は、8月お盆の時期までと決めた。

 ソムリエの資格を持ち、夜はフレンチも提供しているが、地元で大人気のうどん屋さんが短い歴史に幕を下ろす。あ~、神も仏もないって、このことか。あと半月でこのうどんが食べられなくなるなんて…。

 温かいだしで食べても良し、冷ぶっかけでズルズルやっても良し。「誰が食べに来ても満足してもらえるものを提供したいんです」との信川さんの思いを真正面から受け止めて、一生忘れないためにも出来る限り通うことにする。(元関西テレビアナウンサー)

 ◇山本 浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。

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