【ヤマヒロのぴかッと金曜日】政治の本来の意味とは…正義とは何かを考えてみた
先週のコラムで書いたように、今国会は結局、少数与党に過ぎない自民党が主要野党を手玉に取り、私立高校無償化で日本維新の会、103万円の壁で国民民主党、そして年金問題で立憲民主党にあめ玉を与えることで乗り切った。
挙げ句、絶対手をつけたくない消費減税の代わりに、国民には一人当たり基本2万円のあめ玉を参院選の公約に盛り込む考えだそうだが、各社世論調査で明らかなようにこのあめ玉には反発の声の方が強い。それでも減税はしたくないというのが政治家や財務省の本音だ。
自民党にも減税派はいるが、「給付のほうが生活者のため」という執行部の方針はそう簡単に変わりそうもない。そもそも時の権力者というものは、大昔から、民から税を搾り取ることを最優先に考えてきたことを、漢字が証明している。
政治の『政』の文字を見ていただきたい。正と攵(ぼく)から成るこの字。まず、正という字をさらに分解すると、一と止になる。『一』は古代文字では『口』の形をしていて、壁で囲った城の形を表す。『止』は古代文字では人の足跡。これが今の『足』の元々の字となった。現代では『とまる』と読むこの字は『あるく、すすむ』を意味した。なので『正』は、城に向かって進む、進軍して相手を征服することを表した文字なのだ。
力で征服して、こちらの思うように『ただす』のが元々の意味だとか。今では正しくないことが古代では逆だった。その後『ただしい』の意味で使われるようになったので、区別するために『征』の字ができた。『征』の元の字は『正』だったのだ。
さらに征服した土地から徴税したことから『征』には税金を取り立てる意味が含まれている。攵(ぼく)は、手にムチを持って相手をたたく形を表しているので、敵を力でねじ伏せ、ムチを使って徴税するのが政治の『政』の本来の意味らしい。
決して私などが思いつきで言ってるのではない。漢字学の第一人者、白川静氏が監修し、元共同通信記者の小山鉄郎さんが出版した『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』の中に書かれてあったので間違いないところである。ついでに言えば、政(まつりごと)をつかさどる支配者や、官の長を『正』といった名残で、今でも検事正、警視正といった役職が存在しているのだそうだ。「正義ってなんだろう」と考えてしまう。
無論、現代の政治家たちに「この国を良くしよう」という思いなどない、とまで言うつもりはないが、たまに彼らが仁徳天皇の『民のかまど』の例を引き合いに出すたび、その本気度を疑ってしまうのだ。
消費減税論が湧き起こると、判で押したように『社会保障の財源はどうするつもりか』と言われるが、社会保障財源=消費税と決めつけなければならないのか?お金にイロなど付いていないのである。法律が…というなら法律を変えればいい。
幸いなことに、今は選挙を通じて政治を正す武器を私たちは手にしている。
血税を搾り取るだけが現代政治ではなかろう。本当に大切な議論を国民に指し示すべきだ。(元関西テレビアナウンサー)
◇山本浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。
