「“スイッチオン”の彼はすごいよ」 中大時代の恩師・清水達也監督が明かす「侍・森下翔太」の素顔
第6回WBCで2度目の連覇を目指す日本代表「侍ジャパン」。代表選手たちの原点、素顔に迫る「侍外伝」の第4回は阪神・森下翔太外野手(25)だ。2024年プレミア12では全試合で4番を務めるなど主軸としてけん引し、今大会も日本代表に選ばれた。プロ入りまでの4年間を知る中大時代の恩師、清水達也監督(61)が当時から変わらない勝負強さと、心の成長について語った。
一目ぼれだった。清水監督は初めて見た東海大相模時代の森下に目を奪われた。「スイングの強さ、打球の飛距離は他の子と比べて全然違った」。期待通り、中大では1年春からレギュラー入りし、めざましい活躍を見せた。ただ、同監督がほれ込んだのは“飛ばし屋”という技術だけではない。感情を前面に出したプレースタイルも大きな魅力だった。
「スイッチが入った時は本当にすごい力を発揮する。打撃だったらチャンス、守備でも走塁でも“スイッチオン”の彼はすごいよ」
チャンスでの集中力、得点につなげた時に見せる爆発的なガッツポーズや雄叫び。試合中に闘争心をむき出しにする“スイッチオン”の状態は、仲間に好影響を与え、チームに勢いをもたらした。反面、凡退やミスをした時のイライラや悔しさも表に出てしまうところがあった。空気感をつくる森下の存在はチームにとって大きく、先輩の牧秀悟(DeNA)や監督、時には同級生からも感情面について注意されることがあったという。
周りから指摘を受け続けたこともあり、副主将で中軸だった4年時には意識の変化が徐々に表れ始めた。清水監督の脳裏に刻まれたのは東都リーグ1部残留を決めた22年6月22日の1、2部入れ替え戦・東洋大戦の3回戦。0-1で迎えた九回裏、無死一塁で森下が打席へ。「バントの選択肢は全くなかった。託そうって」と指揮官。主砲は四球で好機を拡大し、2-1の逆転勝利につなげた。これまで苦しい試合の好機では、気持ちが負けて大振りになることが多かったが、より考え、冷静にチームを引っ張るようになった。成長を示す象徴となる一戦だった。
清水監督は森下が阪神に入団後も、試合を見たり連絡したりと気に掛けている。その中で技術面だけでなく心の成長も感じた。今年2月に阪神の春季キャンプに足を運んだ時のこと。タイミングが合わず会うことができなかったため、ショートメッセージを送ると間もなく返信が来た。
「すぐに返ってきたよ。その辺がしっかりしたね。(感謝の気持ちが)強くなってるんじゃないかな」
昨季のリーグ優勝時に送った「おめでとう」の言葉にも、「ありがとうございます」と丁寧に返事が送られてきた。「いろんな人から連絡はあるだろうけど、ちゃんと返してるんだなって」。どれだけ“大物”になっても周囲の支えを忘れず、感謝の気持ちが一層強くなっていると感じた。
心身ともに磨かれ、4年目でWBC日本代表に選ばれた。「阪神で3番を任されるようになってから期待も大きかった」と納得の様子で目尻を下げた。「去年の活躍というか、強いスイングができて勝負強さとかを考えたら、もう選ばれるかなって。予想以上って事もない、やっぱりなって感じ」。昨季は143試合で打率・275、23本塁打、89打点。進化し続ける背番号1の姿に侍入りを確信していた。
大谷や鈴木、吉田らメジャー組が大活躍をみせる中でも、森下らしい躍動を願う。「連覇してほしいし、メジャーに行っている人たちの中に入っても中心となって活躍してほしい」。日の丸を背負い、世界と戦う教え子からの吉報を心待ちにした。
◆森下 翔太(もりした・しょうた) 2000年8月14日生まれ、横浜市出身。25歳。182センチ、93キロ。右投げ右打ち。外野手。22年度ドラフト1位で阪神に入団。23年の日本シリーズは歴代新人最多の7打点を挙げ、優秀選手に選ばれた。24年はプレミア12で全試合4番を務めた。昨年はゴールデングラブ賞とベストナインを初受賞。
