「ハイライト」はまだ先
【8月29日】
実は、長期ロード明けの巨人戦をテレビで見た。近本光司が初回先頭打者ホームランを放った28日夜のこと。そんな大事な日に休みを取ったのは、会いたい人がいたからだ。
滋賀県湖南市甲西の粉もん居酒屋、「ビールとハイライト」…その店主、渡辺新一といえば、琵琶湖畔、いや京滋の虎党で知らない者はいない。渡辺渾身の妙味、そして、その人柄で虎党は自然と集まる。僕の場合、6月に他界した元デイリースポーツの僚友・松下雄一郎が繫いでくれた縁だった。
「いつか、滋賀のお店へ風さんと一緒に行きたいんすよ…」
約束は叶わなかったが、僚友のコラムの「ファン」という店主は歓迎してくれた。お店のテレビで近本の初回先頭打者弾を見て03年を思い返した。この人なら分かってくれる。金本知憲をこよなく愛する店主に聞いてみた。
渡辺さん、18年ぶりに優勝した03年、心に残るアニキの一発は?
「マジックが点灯した夏に、それまでチームバッティングを優先していた金本さんが唯一ホームランを狙ったという、あの一本ですね…」
誰よりも金本本人が「03年で一番のバッティング」と評した一本がそれ。
あの日も甲子園へ帰ってきた長期ロード明けの巨人戦。初回、金本が桑田真澄から初回に逆転弾を放ち初戦を取った。アニキの述懐を思い出す。
「ロードで負け越して甲子園へ帰ってきて、巨人との初戦で負けたらズルズルいきそうな雰囲気があった。繫いで1点を取りにいくより長打狙い。自分で決めてやろう、と。あの試合に勝って『優勝できる』と思ったよ」
23年前の夏と状況は違う。Vを確信する一発…とまではいかないが、下位の中日に負け越して帰ってきた甲子園で、近本のアーチがVロードを照らしたことは間違いない。
さて、甲子園の記者席から眺めた大一番の第2R、マジック「23」を灯す一打は冷静なこの男から生まれた。
「申告敬遠ということは僕で勝負するということ。(相手)バッテリーとしてはボール先行でいきたくないと思いますし、どんどんストライクがくるだろうという予想の中で、早めの勝負になるだろうなとは思っていました」
試合後の通路、坂本誠志郎に直接聞いたのは、あの場面、自分で決めにいくぞという思いがあったか、どうか。
四回。輝の二塁打の後、相手バッテリーは高寺望夢を申告敬遠し、打撃好調な7番打者との勝負を選んだ。1ボールからファウルしたスライダーも、仕留めた3球目ツーシームもやや高いボール球に見えた。坂本は言う。
「ツーシームは頭にありましたけど、強引にいきすぎるとファウルになっちゃったり、インサイドの球に強く反応し過ぎると、アドバンテージがバッテリーのほうへいっちゃう感じがするので、センターへ、丁寧に打とうという思いがありました」
オレが!オレが!ではない。地に足をつけた猛虎のハイライトはまだ先。クールな主将の先導で3戦目も着実に取りにゆく。=敬称略=
