人の上に立つ者の器
【10月18日】
右隣に福原忍、左に久保康友…そんな環境で運動会を観た。自分が関わる西宮市内の小学校は何せプロ野球関係の保護者が多い。あっちを見てもこっちを見ても知った顔が沢さん…。
阪神がスイープしてくれたおかげで僕もこの日の観戦がかなった。子どもたちが無心で駆け回る姿を見れば心が洗われる。時おり阪神OBの2人と野球談議で盛り上がりながら…。演目の合間に久保が言った。
「ベイスターズの監督、次は誰がやるんだろう?」
相川亮二コーチが内部昇格するみたいだよ。そう伝えると、福原が「きょうの新聞に出てましたよね」と相づちを打つ。久保は「へぇ。そうなんですね」と、ちょっと驚いていた。DeNAは久保にとって古巣であり、三浦大輔は同郷奈良の先輩だから、やはりその去就は気になっていたようだ。
阪神が日本シリーズ進出を決めた17日、僕は初めて三浦大輔の囲み会見に入った。といっても試合前のことだ。いつも感じることだけど、敵軍の実情は知らないことが多い。三浦は就任以来5年間、試合前と試合後の取材対応を一日も欠かさずこなしたという。メディアの人間を「ファンの方の代表」として捉えていたから…だそうだ。
奇しくも番長の最後の試合前会見を聞かせてもらったわけだけど、途中、何度か目が合った。
現役時代の三浦と横浜中華街で食事をご一緒したことがある。球界の奈良県人の集まりに呼んでもらって。リーゼントで決めたプライベートの三浦を囲んだのは6~7人だったと記憶しているけれど、その場で感じた印象は…
なんて器の大きな…。
心の綺麗な人なんだ。
将来の話になったときに「どうかな…」と、指導者への欲をゴリゴリ示さなかったことが懐かしい。初見でも必ず人の目を見て語る。上からモノを言わない。あの謙虚さと、ワックスバリバリの髪形、そのギャップにやられてしまう。ちいちゃい組織で出世してすぐに肩で風を切る小物とはえらい違い…仲間内でそんな話になった。
そういえば、前述の三浦の囲み会見でDeNA担当のメディアから「験かつぎ」の質問が出た。監督になってからの三浦は「験はかつがなかった」そうで、それを最後まで貫いたかどうか確かめる問いかけだった。指導者として「座右の銘も無い」。全てとは言わないが「フラット」で通したという。例えば「期待する選手」を問われても「全員です」と答えるなど、徹底していたのだとか。
人の上に立つ者は周りから「器」を測られている。小物ほど偉ぶり自分を大きく見せるものだけど、三浦は最後まで謙虚だった。「返答がちゃんとできなかったこともあって大変だったなと思います」と、メディアに頭をさげた。前夜甲子園で涙した三浦を見れば数年前あの中華街で語った「どうかな…」の面持ちが甦る。俺は人の上に立てるのか…あれが自問自答だったとすれば、その問いかけこそリーダーになるべき器だと今感じる。=敬称略=
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