ぼちぼちいこか

 【3月21日】

 人との繋がり、ご縁というのはありがたいものだ。センバツが開幕してから、そんなことを思う。実は、家族ぐるみで大変お世話になるご家庭の長男がこの度、甲子園に出場することになった。

 智弁学園の安藤壮央(あんどうそお)。大阪桐蔭を撃破した昨秋の近畿大会決勝でマスクをかぶったV捕手である。西宮出身の彼の父親は、東邦から東海大、社会人を経て千葉ロッテに入団した元プロ野球選手、安藤学。現在、東京と大阪に本社を置く大手総合商社の常務執行役員を担う安藤は、近畿大会決勝と同一カードになった大阪桐蔭との初戦を心待ちにしている…って、この話は後日書くとして、きょうはその安藤から聞いたもうひとつの縁深い話を…。

 センバツ今大会屈指の右腕でプロ注目の達孝太(たつ・こうた)をご存じの方も多いと思う。193センチの長身で「奈良のダルビッシュ」ともいわれる天理のエースは1回戦で10奪三振。「不調」(本人談)ながら最速146キロ、161球の完投でネット裏のスカウト陣を唸らせたわけだけど、その剛腕の父親がナント安藤と同じ商社に勤務し、営業部長を担うのだ。

 同じ会社で、同い年の息子がともに甲子園の同じ大会に同じ県から出場する。これってなかなかレアですよ…安藤にそう伝えると、「だよね…」と頷いていた。

 そもそも僕は奈良出身だから智弁にも天理にも肩入れするのだけど、縁といえば、達投手を指導する天理の監督が元阪神の中村良二であり、同い歳の金本知憲と親交があることも推しに繋がる。

 その中村は今大会前、昨秋亡くなった元天理監督・橋本武徳の墓前に手を合わせた。橋本は天理を二度全国制覇へ導いた名将であり86年夏は中村が主将として橋本の胴上げを叶えた、師弟の間柄だ。 橋本が劣勢でも笑顔でナインへ発した名言を思い出す。「ぼちぼちいこか」-。名将は生前、中村の帽子のツバ裏に大きく「笑」と記した。選手の自主性を重んじる橋本野球が継承される天理を見れば、中村が引退した翌年に阪神へ移籍した矢野燿大が監督になり、舞台は違えど、同じように自主性を掲げ「笑」をモットーに戦うのもまた、おもしろい。

 矢野阪神がオープン戦Vを決めた。しつこいようだけど、僕は今年タイガースが優勝すると思っている。26日に大役を担う藤浪晋太郎にまず望みを託すわけだけど、思い返せば、大阪桐蔭時代の藤浪に分岐点となるような試練を与えたのが、橋本率いる天理だった。

 藤浪が2年生エースとして臨んだ秋の近畿大会準々決勝で大阪王者の大阪桐蔭は、奈良3位の天理に逆転負け。この秋の屈辱を糧に藤浪のエース道、春夏連覇への道が開けたのだ。あのとき優勝候補を破り近畿を制した橋本は「僕が選手を信用しなければ選手は育たない」と語り、藤浪は「勝てる投手になりたい」と言った。そんな関係性を線で結べば、あれもこれもすべて縁に思える。矢野を信じ選手を信じ、週末のプロ野球開幕を待つことにする。=敬称略=

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