阪神・嶌村球団本部長インタビュー「このままでいくのではなく26年仕様に」 ポスティング&野球振興を語る【第3回】

 阪神・嶌村聡球団本部長(58)がデイリースポーツの単独インタビューに応じ、黄金期に突入したチームに変化の重要性を訴えた。来季は球団史上初のリーグ連覇を目指すが、「優勝したからといってこのままでいくのではなく、26年仕様に」と強調。国内FA権を取得した近本光司外野手(31)の残留、ドラフト、外国人補強、野球振興まで、全3回で語り尽くす。【第3回】

 -メジャー挑戦を公言する選手も増える中で編成も難しくなってくる。

 「これは12球団、共通の流れでしょうね。選手の気持ち、考え方なので。止めることはできない。それにあらがうことなくやっていく。それに沿った中でのチーム編成が必要になってくる時期なのかなと思うけどね。ポスティング制度は球団に権利がある。選手からしたら若いうちに行きたい、というのは分かるんですよ。ただやっぱりタイガースっていうことを考えた場合、どうしても意気込みだけで分かりましたっていうのはね。だから言えることは総合的判断しかないんです」

 -ポスティングに関して、12球団共通の明確なルールがあった方がいいと思うか。

 「そこは、かなりデリケートな問題であるので、ここでの発言としては控えさせてもらいます(笑)。ただ、私個人的な考え方ですけど、今は、12球団それぞれが環境だったり事情だったりがあるので、それぞれが自分のチームのこと、その選手のこと、ファンの方々のことをくみ取っているのではないでしょうかね。ポスティングっていうのはウチも藤浪、青柳に、昔の井川もやっいるわけで。閉ざしているわけではないわけですけども。総合的判断に全てなってくるのかな」

 (続けて)

 「選手がね、海外でやりたいっていう気持ちは止めることはできない。ある意味それは仕方ないっていうか、いいことだと思います。だからチーム編成的には、そういうのがありきでどう編成していくかというところは難しい課題ではあるけど、乗り切っていかなければならない。いろんな手法を駆使して、その時は外国人選手にちょっといくとか、FAで他球団からとか、っていうのも手法の一つ。ただ、できる限りそれは最後の手段として取っておきたい。そういう時期が来る可能性はあるから、循環していくから、その中でまた今みたいに生え抜き中心のチームに戻していくという循環だとファンの人が一番喜ぶでしょ。私はそう思っています。外国人選手でもウチが直接取ったら、生え抜きの外国人選手って思っているので(笑)」

 -野球振興室について。

 「1年前に野球振興室を発足させていただいた。喫緊の問題である少子化のペース以上の、野球競技者人口の減少。見てくれる人もやっぱり野球にちょっとでも携わってくれた人の方が、そのまま野球を見てくれる。試合をやってなんぼ155キロ投げても、お客さんに来てもらわないと成り立たない。そこはNPB12球団で取り組もうという形にしてるから。ウチもそういう部署がなかったんで作りますよ、と社長に相談して。自分が室長になって。スタートアップの時って旗振り役が絶対に必要だから」

 -具体的な取り組みは。

 「来年のテーマは3本柱のうち、アカデミー事業の野球とダンスというのは変わらず拡大していきたい。二つ目、木戸監督のタイガースWomenについても女子へのアプローチ。12月にもSGLに約60名の女子生徒が来て、Womenが教えるというのを初めてさせていただいた。三つ目の普及振興もいろいろさせていただいてるけど、その中で来年は中学の部活移行支援を、水口(栄二)さんと組んでお膝元の西宮市でやらせてもらう。この活動はタイガースが全国的に展開することは現実的に不可能なので、1軍本拠地である西宮市で展開していくことで、他地域でのモデルケースになればという思いです」

 (続けて)

 「タイガースが主体的に行うとかなり取り上げていただける。やっぱり新聞に載ると違うのよ。影響力がある。もう一つは、野球振興室の普及振興施策の取り組みを総合的に称して、『未来につなぐトライアルベースボール』とうたいます。小学生対象のゲストティーチャー、幼稚園訪問、中学教員向けの指導者講習、中学硬式野球対象のタイガースカップ…新規活動をたくさんやってるわけなんですよ。普及振興政策として。何かを求めるためにじゃなくて、危機感を持ちながら」

 -長い目で見ていくのは大変

 「ただね、興味を引くことがあって、中学生の軟式野球部員が今年5000人ぐらい増えているんですよ、全国で。その前が500人ぐらいかな。これなかなかすごいでしょう。やっぱり大谷選手も出たWBCの優勝って大きいと思うし、やっぱりあれを地上波で取り上げていただいたのが大きいと思う。NPB12球団がそれぞれ地道にやって成果が出てきているって、関係者の方にもおっしゃっていただいたみたいで、ありがたい話。やっぱりね、中学校の部活って大きいよ。だって小学校でやっていて、じゃあ中学はどこで受け皿になるか。1番のポイントは部活。うまい子は硬式行ったりするけれども。だから、絶対大事なんですよ、中学の軟式は」

 (続けて)

 「西宮もね、17校かな、元々、野球部あって。今回の民間クラブが10チームで、ウチの3チームを入れて13のクラブができる。17校あって13でちょっと足りんぐらいやねんけども、まあまあ追いついてきているかなっていう気はしているんで。それがないと野球を続けることができない生徒が増えてしまう。野球ってやっぱりグラウンドがいるし、いろんな道具がいるし、なかなか大変。でもうれしいニュースですね、増えているていうのは。地道にやっていこうと思います」

 -今後、勝つための組織づくりは。

 「フロント組織としてどうするかですが、プロ野球球団は『勝利』という大きな分かりやすい目標が立ちやすいので、全社員そこに向かって進んでいくことの意識をさらに共有したいですね。事業系なら、どれだけ球場に足を運んでもらえるか、どれだけファンの皆さまのニーズに沿った商品を展開できるとか。総務系なら全体をどうマネージしていくかとか。野球系はそのものですが。情報の共有だけでなく、認識の共有が大事ですね。そこから共有した認識をもとにどう行動するかにかかっているのです」

 -社内で意識を共有して。

 「いつも社内で冗談ぽく言っていることがありまして。年末なのでご容赦ください(笑)。仕事は、まず中島みゆきさん『糸』です。縦の糸、横の糸、組織はどうしても縦割りになりがちですが、そうなるなら認識共有などできない、どう横串をさすか。二つ目は、その進化系で『糸』ができたら、次は、宇多田ヒカルさん『Automatic』になる。自動的に業務が回ります。最終形が、工藤静香さん『MUGO・ん・・・色っぽい』。これは歌詞の一部ですが、『目と目で通じ合う』アイコンタクトで仕事ができる。こうなると良い組織ですね。難しいですけどね。『そういう組織になりたいな』ということです。失礼しました(笑)」

 (続けて)

 「最後に、ファンの皆さま方、26年シーズンも藤川監督率いる阪神タイガースへのご支援、ご声援の程、どうぞよろしくお願い致します。皆さまの付託に応えられるように頑張ります。1年間ありがとうございました。それでは、良いお年をお迎えください」

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