阪神・嶌村球団本部長インタビュー 球団史上初リーグ連覇へ「優勝したからといってこのままではなく26年仕様に」近本の残留「今オフ一番の目玉」「絶対に残さないとアカンと」【第1回】

 阪神球団のチーム編成や未来への野球ビジョンについて語る嶌村球団本部長(撮影・立川洋一郎)
 阪神・近本光司
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 阪神・嶌村聡球団本部長(58)がデイリースポーツの単独インタビューに応じ、黄金期に突入したチームに変化の重要性を訴えた。来季は球団史上初のリーグ連覇を目指すが、「優勝したからといってこのままでいくのではなく、26年仕様に」と強調。国内FA権を取得した近本光司外野手(31)の残留、ドラフト、外国人補強、野球振興まで、全3回で語り尽くす。【第1回】

  ◇  ◇

 「去年の年末にもインタビュー記事を書いていただいて。縁起が良い取材ですよね。2年連続の第2弾、光栄です。ありがとうございます」

 -国内FA権を取得した近本が残留。

 「FA権を取ったということは選手の誉れであるんでね、そこは尊重すべきところ。人生の岐路に立って移籍するか、残留するかは個人の自由。ただ、われわれはやっぱり残留を要請するというところから始まるのはどの選手に対しても同じです。私がこの仕事に就いて5年前に梅野から始まって、近本で10人目。大山みたいに宣言残留であるとか残留の仕方は選手それぞれであるんだけど、全員がタイガースに残ってくれた。理由はそれぞれだと思ういますけど、残留してくれたということで、チームの戦力というのは保たれる。保たれた上で、新しい息吹としてドラフト獲得選手や外国人選手が入団し、戦力の上積みがなされて今のチームがあると思っているので」

 -近本はチームに不可欠な存在。

 「入団したときからずっとCSに出ているので、やっぱり勝ち方を知っているし、成績を見たらどう見てもタイガースの中心選手。当然、クリーンアップも頑張ってくれているけど、近本、中野という1、2番というのが他球団の脅威となっているとよく聞くし、そこが現在のタイガースの特徴。守備においてもそうだし、打撃においては、長打もあるし、打って走って1人でスコアリングポジションにまでいけるのは大切なこと。だから、近本は絶対に残さないとアカンという思いで、去年のオフから残留対策を始めたということですね」

 (続けて)

 「昨年、複数年を提示させていただいて、最終的に本人が、単年を選択したのですけど。そこで、彼といろいろな契約方法について話し合いをしたことが、本番前の予習になったかなと思います。近本も話に入りやすかったのでは。淡路島で生まれて、社高校、関西学院、大阪ガスという経歴であるし。彼も地元愛があるし、数年前より、子供のキャリア形成のための事業を展開するLINK UPの活動をされているので、近本もその部分に対する気持ちは強かったと思う。絶対に残さないとアカン選手としてのウチも気持ちが強いし。その思いで交渉させていただいた。選手がタイガースを選択すること、そこが大事。ウチのシンボリックな選手。1番・近本。あと何年もやってほしい。今年のオフの1番の目玉でしたね」

 -大山は宣言残留。近本は宣言をせずに。

 「こちらとしては宣言するかしないかは、重きに置いてなくて。スケジュール的なもので行使日は決まっているのでね。宣言しても残留という手があるわけだから。話し合いを続けるところが1番のポイントであって、当然、契約の社会だから、向こうの言い分もこちらの言い分もあって。でも、どこかで折り合いがつくものなんですよ。ウチがここ数年、上位の成績を残した中、リードオフマンとして常に成績を残しているので、大したものですよ」

 -残留の反響も大きかったのでは。

 「われわれからしたら、大山の時もそうでしたけど、それこそ危機感を感じてやっていました。抜けたら、チーム成績に影響するし。チームへの愛着は数年いたら絶対出てくるわけで、その中で何を求めているかというところだったと思うんですけどね。彼の場合、息長く、モチベーションを保ちながら野球をやりたいというところが一番にあったと思うので。追求型の選手だから。野球以外のところでも、彼のLINK UP事業に、タイガースができることを後押しして、一緒に連携していきたいなという気持ちも強かったので。最後は握手して。一番はファンの人が、近本が残ってくれて喜んでくれているのが、全てですよ」

 -交渉を終えた後の握手はどんな雰囲気に。

 「今回の話し合いでは、あまり前面にでないで、担当者に基本的に任せていました。当然、具体的な方針についての意思決定はしていましたが。特に契約合意の日は、NPB会議が東京で開催され、甲子園にはいることができなかったのです。二人と電話やメールでやりとりは行っていましたが。(決断の日の交渉が)長かったのは、もう(権利行使の)締めきりで、決着しようとお互いが思っていたから。絶対に残ってくれるとか、高をくくることは無かったですので。常に真摯に向き合って、こちらの誠意を伝えて。残ってもらいたいというところを、どう契約に具現化していくしか考えてないし、仕事とはそういうものと思う。まあでも、今回だけでなく、全てのFA交渉はなかなか難しい。気が安らぐことがないし、もし流出となったらと考えると怖いので、考えないように過ごしていますが、やはり神経が張りつめていますね(笑)」

 -ドラフトでは立石の交渉権を獲得。公式YouTubeでは大喜びする姿が。

 「家に帰ったら、娘から『はしゃぎすぎちゃう?』と言われて。何のことやと思ったら、公式YouTubeに映っていてビックリでした。あのシーンは、それだけドラフト会議というのは重要であって、今後のタイガースのチーム編成において非常に大事なものであるということで。藤川監督にクジを引いていただいて、立石君が来てくれて、『タイガース、さあこれからまた行くぞ』というのが、あの喜びの表れ。今回は野手中心のドラフトと当初から決めていたので。立石君が指名できたということで、2位3位に流れていった。プランAのAですよ。想定通り。1位で抽選が当たるとね、やっぱり、その後のドラフト指名がうまく流れるんです。残り福で、藤川監督がよく当ててくれましたよ」

 -藤川監督は1年前から考えていたと。

 「前年は伊原から入って、ピッチャー、ピッチャーでしょ。毎年のドラフト市場を見ながら、次の年がだいたい分かるので。だいたい思ったでしょ、次は野手を取るって。そういうマスコミの方とかファンの方が分かりやすいドラフトが一番いいんですよ。分かりやすいドラフトをするってことは、現状のチームの編成がバランス良く取れているということなんです。今、入ってくる選手って『(ポジションは)どこ入るねん』というぐらいで。逆にここで入ってくれるぐらいの選手だったら、非常に力があるということだし、チームとしては選手層が厚くなり、戦力が間違いなくアップしてくる」

 -リーグ優勝した2年前のオフは外国人補強は1人だったが、今年は積極的に。

 「これも良しあしではなくて、その時にあった考えでしていることなので。2年前は2年前のやり方。2年前というのは今の選手は2歳若かった。だから、ここから伸び代っていうのは非常にあるっていうところで、そういうチョイスしたっていうのは、その時の判断として間違ってないと思う。ただ2年たって、次の考え方があって、同じ考え方でやる必要はないので。1年間戦った同じ選手だけ、同じコーチングスタッフだけでやるのは、それは25年仕様なんですね。年を越えると各球団やはり戦力を補強する。1周目の考え方と2周目の考え方をチェンジしましょうよと。監督がそういう考え方で、私もそう。だからまず組閣の中では、それほどの入れ替えはないのだけれども、一番のポイントはやっぱり和田ヘッドコーチ。ベテランの1軍監督経験者で全てを知っているというところで、和田さんにやってもらう」

 -変えることが大事。

 「選手編成においても積極的に変えていこうよということで、ドラフトについてもこういう形で運良く当たったということもあるんだけども、外国人選手についても今年の現状を見て、それなりの野手をショートというポジションで取って。ピッチャーもドリス以外は新規3選手を獲得し、2年前とやり方をちょっと変えました。他の球団も変化するのだから、こちらも25年優勝したからといって、このままいくのではなくて、26年仕様に変化していこうよと。前向いて自ら変える。それが、また新しいチャレンジなのです。チャレンジャー。変化への対応を25年から26年についてはわれわれの優先順位、プライオリティーの1番として考えたと。監督と相談しながら、こうさせていただいたというとこですね」

 -和田ヘッドコーチの存在は非常に大きい。

 「そうですね。藤本総合コーチとコンビでやりながら、監督を経験されているし分かってはるんでね。藤川監督のサポート的には、非常に適した人材だなと思うし。45歳若き指揮官を、平田2軍監督と1軍の和田ヘッドコーチとベテランの生え抜きOBが支えるっていう構図になってると思う。そういうところが、私は一番願っていたところだったので」

 -平田2軍監督も。

 「平田2軍監督もそうですよ。だから和田さんの立ち位置をどうするかっていうところが今年のポイントだった。来年ヘッドとして置くのか、スタッフとして置くのか。それで監督は、やっぱりヘッドコーチにと。その相談を受けた時は、『それでいきましょう』という感じです。監督の判断です」

 -監督からの提案だった。

 「それはそうです。ヘッドコーチは、藤川第2次内閣の重要閣僚ですので。組閣の時は監督と相談しながら、『監督これどうですか』、『いいよ』とか、そういうやりとりで決まっていくんですね。1人の目で見るより2人の目で見ていくと。監督はその辺りはよく人の意見を聞くんで。私も意見しながら。最終的には、監督の内閣ですから、監督が最終決定しますが。まあいつもそうです」

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