【中塚美智子医師】仕事後の至福の一杯 歯が溶けるリスクに注意

 「仕事の後のビールは最高!」という季節になりました。冷たさに加え、炭酸の爽やかさがたまりませんね。しかし、炭酸飲料を含めた酸性の飲み物は、歯にとっては少々注意を要するものなのです。

 北迫勇一先生らの調査によると、ビールの水素イオン指数、いわゆるpHは4・0~4・3でした。水道水の水質基準はpH5・8~8・6であるため、ビールは水道水よりpHが小さい、つまり酸性に傾いていることになります。

 歯の表面にあるエナメル質は、虫歯の場合、口の中のpHが5・5以下になると溶け始めるといわれています。エナメル質が薄くなると、エナメル質より軟らかく刺激を通しやすい象牙質が現れ、冷たい物がしみたり、歯が欠けたりすることがあります。

 北迫先生らの調査結果によると、ビールのほか日本酒4・4、赤ワイン3・4、スポーツドリンク3・5、缶チューハイ(かんきつ系)2・9、炭酸飲料2・2~3・4でした。また体に良かれと思って飲むトマトジュースはpH5・0、野菜ジュース3・7、黒酢ドリンク3・1~3・3で、やはり酸性を示します。

 これらの飲み物を摂っても、通常は唾液の作用で口の中はほぼ中性に戻ります。しかし、おつまみをお供にするなどしてだらだらと飲み続けると、口の中が長時間酸性に傾いたままとなり、歯が溶けるリスクが高まります。

 仕事の後の至福の一杯を楽しむのに、健康、ならびに“健口”は欠かせません。冷たいビールでいったん喉を潤したら、シュガーレスガムなどをかんで唾液の分泌を促す、ミネラルウオーター(pH6・9~7・0)や緑茶(pH6・2)などで酸を洗い流す、また普段からフッ化物配合歯磨き剤を用いて歯を磨くなど行い、口の中の環境を整えましょう。

 ◆中塚美智子(なかつか・みちこ)大阪歯科大学医療保健学部准教授。歯科医師、労働衛生コンサルタント。「歯科医療の発展が日本を元気にする」と信じ、日々未来の歯科衛生士、歯科技工士の養成に携わっている。

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