【野球】なぜ?阪神・及川が今季覚醒した理由 プレート踏む位置&角度 優れた野球脳と探究心でたどり着いた独特のフォーム

 今季大きな飛躍を遂げた及川
 プレートの位置を三塁側に試した巨人とのオープン戦=21年3月
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 阪神の及川雅貴投手(24)が今季大きな飛躍を遂げた。両リーグトップの66試合に登板し、46ホールドで防御率0・87。NPB新記録の18試合連続ホールドも記録した。ここまでの成績を残せたのは、なぜなのか。今回ピックアップしたのは独特なフォームだ。一般的にサウスポーは右打者の内角を突くクロスファイヤーを生かすため、プレートの一塁側を踏むことが多い。及川は三塁側で左足のつま先だけをつけるスタイル。この場所にたどり着くまでの過程に迫った。

 野球脳が優れているのだろう。及川には新人時代から取材させてもらっているが、自分のフォームや取り組みについて、分かりやすい言葉で教えてくれる。オーソドックスとは決して言えない、いわば独特な投球フォームだからこそ、動きの一つ一つに明確な理由があった。

 プロ2年目の春季キャンプごろまではプレートの一塁側を踏んでいた。あれは21年3月14日のオープン戦・巨人戦(甲子園)。まだ19歳で任された先発の舞台で、大胆な手を打った。「一塁側で感覚が悪かった。思い切って、三塁側を試してみようと思って」。この決断が奏功し、4回無失点。現状打破への一手ではあったが、投げやりに変えたわけではない。

 トルネード投法とまでは言わないが、グッと体をひねって腕を振る。「一塁側を踏んでたら、見にくいなと思って」。捕手のミットや打者が見えにくいことで、フォームのバランスが悪くなっていた。そのポイントに気づき、一塁側から三塁側へ真逆の位置に変更。これをきっかけに右打者の内角に直球を投げきれるようになり、ツーシームも効果的に扱えるようになった。

 あれから4年が経過しても、プレートの踏む位置は変わらない。女房役の坂本は近年、三塁側のプレートを踏む左投手が増加していると感じている。その中で及川をリードする上での特徴は右打者への攻め方の幅。「カットボールとかスライダーは内から内に来るし、内から入るツーシームも使える」。角度のあるクロスファイヤーでなくても、十分に内角を意識させることができているのだ。

 加えて、今季は始動前の右足の角度も変えていた。左足は右翼方向へ角度をつけ、プレートにつま先を当ててセットポジションに入るが、昨季までは右足はホームベースと平行。これを左足と平行にするようになった。「足を上げる時に地面についてる方の足が違う角度を向いていたら、気持ち悪いでしょ」。これは今春キャンプでの気づき。オフに陸上トレーニングで体の構造を知ったからこそ、違和感を覚え、フォームのバランスが改善された。

 「この小さな差で下半身の角度とかも変わってくる。それがいろいろマッチして、タイミング良く投げられて、体重も乗せられるようになった。これだけで変わってきたかな」

 横浜高時代は大船渡・佐々木(ドジャース)らと「高校BIG4」と称された。プロ6年目。誰もできなかった記録を打ち立ててみせた。11月の侍ジャパンにも選出。よく「及川は誰かの陰に隠れた存在だから」と言う。もう隠しきれなくなった。もし今後、壁にぶち当たろうとも、優れた野球脳と探究心で乗り越えるはずだ。(デイリースポーツ・今西大翔)

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