【野球】イチロー刺して自画自賛「自分でもほれぼれした」外野守備での会心プレー振り返る元ホークス湯上谷さん
俊足を生かした広い守備範囲を武器に、ホークスで16年プレーした湯上谷竑志さん(59)は内外野をこなせるユーティリティープレーヤーとして存在感を発揮した。遊撃、二塁でのレギュラーを経て、湯上谷さんが新たに外野守備に挑むことになったきっかけとは。不慣れな守備位置で、オリックス時代のイチロー選手を相手に会心のプレーを披露した思い出とともに語った。
◇ ◇
内野の全ポジションに加え、湯上谷さんに外野守備という新たなミッションが加わったのは、秋山幸二選手が95年6月上旬に持病の腰痛を悪化させたことがきっかけだった。
「秋山さんが腰痛になって。そのころ僕は打ってたんで、おまえ、外野できるかっていうところから始まったんです」
秋山選手の穴を埋め、打撃好調だった湯上谷さんを有効活用するための苦肉の策。当時のデイリースポーツ紙には「湯上谷は器用だから」という寺岡孝ヘッドコーチのコメントが掲載されている。
秋山選手が登録抹消された翌日、湯上谷さんは早速、代役として中堅でスタメン出場。シーズン終盤には右翼も守っている。
「外野は距離感が分かりづらいんです。自分の走る速度とボールが来る状況を合わせる感覚がない。内野フライは自分でパッと見たら捕れるかどうか分かる。外野の場合は、放物線が本当に来るんで、打球が伸びてくるのか、手前に来るのかが分かりづらくて。目も悪いんで、そこはちょっと難点でしたね」
ただ、本職の内野守備をこなすようにはいかなくとも、プロである以上出場機会を逃すわけにはいかない。やらない選択肢はなかった。打球の感覚をつかむため、打撃練習の時間帯は、自分の打撃練習の時間を削ってでも、外野で打球を受け続けた。あとは開き直って腹を据えた。
「打球が(外野に)全部来るわけじゃない。1球か2球だと思って、その時にどうするかだけ。(失敗したとしても)目をつぶってくれるよね、コーチって」
内野の複数ポジションに加えて外野守備もこなせるようになったことは、湯上谷さんの選手人生にとって大きな武器となっていく。
ふと、湯上谷さんが思い出したように口にしたことがある。
「ひとつだけ言いたいんですけど。僕、ライトを守ってて、一度イチローを刺したことがあるんですよ」
96年8月17日、9番右翼でスタメン出場したオリックス戦(福岡ドーム)を回想した。
「ライト線にふらふらっとした感じでイチローの打球が来てフェアだったんです。セカンドゲッツーの練習で培ったターンの仕方がうまくいって。僕はスナップが強くてコントロールはいいから、イチローがセカンドに走って行くタイミングで投げたんです」
右線に落ちて安打となった打球を湯上谷さんは素早くキャッチし、手首をきかせてワンバウンド送球。二塁を狙ったイチロー選手を刺したプレーをしなやかな腕の動きで再現した。
「あの時は自分でもほれぼれした。イチローもたぶんびっくりしたんじゃないかな。(二塁に)行ったのは失敗だったかなって。僕はそんなにライトを守ってないから、絶対(刺すのは)無理だろうというつもりで走ったと思う」
外野守備で見せた会心のプレーの記憶をたどった。
記憶の引き出しからは、オリックスの当時の本拠地だったグリーンスタジアム神戸で連続試合出場が途切れた苦い経験もこぼれ出てきた。
右足の骨折から復帰して以降、湯上谷さんは90年から正二塁手として3年連続全試合出場を続け、4年目の93年も二塁でほぼスタメン出場を続けていた。だが控えでスタートした7月10日のオリックス-ダイエー戦の七回、球場に異変が起こった。
「煙が出てきて何か燃やしてるのかなっていうぐらい白くなって。霧だったんです。それでコールドゲーム扱いになって、連続試合が終わったんです。自然に負けた。その時は、野球人生が終わったと意気消沈しましたね」
試合が続いていれば途中出場の可能性はあったが、突如として発生した霧に阻まれた。連続試合出場は460でストップ。パ・リーグでは18年ぶりの濃霧コールドゲームとなった一戦をうらめしそうに語った。
(デイリースポーツ・若林みどり)
◇湯上谷竑志(ゆがみだに・ひろし)1966年5月3日生まれ。富山県出身。石川・星稜高から84年のドラフト2位で南海入り。1年目から遊撃手として1軍出場を果たす。ダイエー時代の90年からは二塁のレギュラーとして活躍し3年連続全試合に出場。内外野を守れるユーティリティープレーヤーとして活躍し、2000年に引退。プロ在籍16年で通算1242試合、打率・258、141盗塁。ソフトバンクの育成、1、2軍の内野守備走塁コーチを務めた。現在はもみほぐし店「りらくる」福岡小笹店のセラピスト。
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