【野球】甲子園にかける球児たちの夏 心に残った2度の劇的弾

 高校野球の地方大会から、2度の優勝を現地で見た。1度目は、茨城大会で明秀学園日立が初の夏の甲子園への切符をつかんだ瞬間。2度目は、甲子園の決勝で仙台育英が東北勢初の頂点に立った時だった。全員でひとつの目標に向かう高校球児の姿は、どれも胸を打たれる素晴らしいものだった。

 明秀学園日立は、土浦日大と甲子園出場を懸けて戦った。試合は九回まで、2-2の同点だった。だが、佐藤光成外野手(3年)が、左翼ポール際へ勝ち越しの2ランを放ち、決勝打とした。この打席までは全て打ち取られていたが、最後には豪快な一発。勝利が決まった瞬間、ナインは涙を流しながら、ダイヤモンドを1周する佐藤を本塁で待った。最高の涙だった。

 仙台育英は、準決勝で聖光学院との対決を大量18得点で制し、決勝に駒を進めた。日本一を争ったのは、春夏連覇を狙う大阪桐蔭と、センバツ準V校の近江を連続で撃破した下関国際。だが、そんな難敵にも一瞬も流れを渡さなかった。3点リードで迎えた七回1死満塁には、岩崎生弥内野手(3年)が左翼席への満塁弾を放ち、さらにリードを拡大した。

 岩崎は2年の夏、運動誘発ぜんそく、逆流性食道炎、食道裂孔ヘルニアを同時に患った。「走れないから、ホームベースが踏めない」と母・千春さん(43)に連絡がいったという。今夏の宮城大会でもベンチには入れなかった。それでも甲子園という目標に向け地道に努力し、念願の聖地で、自分の足で本塁を踏んだ。白河の関を越え、誇らしげな顔で東北に優勝旗を持ち帰った。

 今夏、新たな歴史が刻まれ、多くの「初」があった。敗れはしたが、下関国際も初の決勝進出だった。全選手が甲子園の頂点を目指し奮闘し、記録を作った。その姿は感動を呼び、戦うごとに大きくなり続ける球児の背中は、たくましかった。(デイリースポーツ・南 香穂)

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