【野球】「胃から汗が」キャンプインを控え思い出す広島・達川の名言?迷言?

 現役時代に山本浩二監督と談笑する達川
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 胃から汗が…。プロ野球12球団のキャンプインを目前に控え、あの広島の名捕手・達川光男(66)の名言?迷言?を思い出した。

 その言葉を聞いたのは、山本浩二監督就任1年目の1989年2月1日、沖縄市での1次キャンプ初日だった。当時、広島の練習量は12球団随一といわれていた。4、5年にわたり広島の担当記者だっただけに、文字通り朝から晩までビッシリとスケジュールが組み込まれている練習のメニュー表をみてもあまり驚かない。

 だが、この日ばかりは目を疑った。午前中の欄に書かれていたのは「ウオーミングアップ」の文字だけだったからだ。通常、実績のあるベテラン選手はキャンプ初日からハードメニューをこなすケースは少ない。ところが、「鬼軍曹」の異名を取った大下剛史ヘッドコーチの怒声が響く中で始まった練習は、ベテラン組もいきなりのランニングだった。

 それも、体を慣らすために行う10分や20分程度のランニングではない。連帯歩調といわれる「1、2、3」と声をそろえた一団が、1時間以上もノンストップで走っていたと思う。その後、距離をかえてのダッシュにベースランニング。ウオーミングアップが終了したのは正午少し前だった。

 選手はランチタイム後、午後のメニューに移る。そのわずかな時間を利用してまず取材をした相手が達川だった。「すごいアップの時間でしたね?」という私の質問に、返ってきた答えが達川らしい言葉だった。

 「ワシ、胃から汗が出たわ」-。

 キャンプ中に面白いコメントをする選手も多い。だが、このセリフは球史に残る名言?迷言?だと思う。

 達川は「もっと野球のことを勉強せいや」といいながら、いろいろ野球のことを教えてくれた。当時、巨人の正捕手は、達川と同学年の山倉和博が務めており、2人をライバルと考える人も多かった。達川は自分のリードと山倉のリードを比較しながら、どのように投手の持ち味を引き出すかだけでなく打者との駆け引き、配球の基本などを面白おかしく解説してくれた。今、思えばよくそこまで野球のことを教えてくれたと思う。

 「そんなことも分からんのか?」と何度もしかられた。だが、ごくまれに「よう分かっとるやないか」と褒めてもくれた。「ちゃんと分かった上で質問するのが礼儀やからな。だから教えておくんだからな」と言われたことは、感謝でしかない。

 私はこの年のキャンプ途中に広島担当から阪神担当になりチームを離れた。そして、その後、何球団も担当することになったが、捕手に取材をする際、達川に教えてもらった知識を元に質問すると「誰からそんなことを聞いた」と何度も驚かれた。

 私はプロ野球担当として7球団を担当した。その中で、取材を通じて“師匠”“先生”と呼べる指導者や選手に出会った。達川は間違いなく、その一人である。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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