【野球】317勝投手の鈴木啓示氏が名球会行事を欠席した理由

草魂カップの始球式後、捕手を務めた選手と握手する鈴木啓示さん=西脇公園野球場
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 キャンプイン目前、球春到来を前にどうしても気になっていたことがあった。名球会が行った昨年11月23日の総会、24日のベースボールフェスティバル2018(東京ドーム)を通算317勝を挙げた元近鉄・鈴木啓示氏が欠席した。鈴木氏は何年か前に福岡で行われた同会の試合で、ブルペンでの投球練習中に不整脈が出たため欠場したことはあったが、昨年は出場予定者にも名前がなかった。

 健康問題も気になった。久しぶりに同氏に連絡をとり、昨年の名球会イベントの欠席理由を恐る恐る尋ねた。「故郷の西脇(兵庫県)で草魂カップという少年野球の大会があってな。名球会のイベントより先に予定が入っていた。地元の関係者が全部段取りをしてくれて、俺が行かないわけにはいかんからな。少年野球の大会に行っていたんや」と元気な声が返ってきた。

 兵庫県内の少年野球32チームが兵庫県中部にある西脇市に集まり、昨年で6回大会が無事終了したという。

 故郷の少年野球大会に従事する人たちが、偉大な功績をたたえ鈴木啓示「草魂カップ」を開催。大会は毎年、西脇市を中心に5会場、3日間にわたって開かれている。第1回大会から鈴木氏は大会開催中、西宮市内の自宅から約1時間をかけて試合会場にかけつけているという。「関係者が世話役をしてくれて、俺は行くだけやけど、各会場を回って声をかけんとな」と、ホスト役を務め大会を盛り上げている。

 弱小だった球団に入団しながら近鉄一筋で317勝を挙げた。2004年にオリックスとの合併により近鉄が消滅。今年初めには近鉄バファローズOB会が役目を終えた。「故郷(近鉄)がなくなるというのはさみしい」と言っていた鈴木氏。グラウンドを駆け回る子どもたちは背番号「1」を付けた左腕の勇姿を知らない。「昔なあ、近鉄というチームがあって、そこでおじちゃんはピッチャーをしていたんやと説明せんと子どもたちは分からんから。親の方が鈴木さんと声をかけてくれる」と笑っていた。

 付け加えるならばパ・リーグで初めて永久欠番選手となった偉大な投手である。不遇の監督時代はあったものの、球界史上最後となるであろう300勝、日本で4番目の317勝は色あせることはない。

 先日、DeNAの筒香が野球人口減少を憂い、少年野球指導者に警鐘をならした。少年野球の指導に携わる筆者にとって耳の痛い話もあったが、野球発展において底辺の拡大は重要課題であることは一致している。鈴木氏が名球会イベントより少年野球大会参加を優先させたことに感謝するとともに、少年野球に携わる者にとって球界OBの選択を無駄にしてはならないと思った。(デイリースポーツ・岩本 隆)

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