凱旋門賞で日本馬が勝つためには

 今年も夢はかなわなかった。仏G1・凱旋門賞へ、史上最多となる3頭で臨んだ日本馬の挑戦は、厚い壁にはね返された。

 どんなスポーツでもそうだが、競馬も地の利が存在する。日本馬にとってはアウェーの戦い。日本にいる時と変わらない完璧な状態で馬を送り出せるか。難しいことだが、その第一関門をクリアしなければ扉は開かない。

 日本馬の凱旋門賞挑戦は19戦を数える。99年エルコンドルパサー、10年ナカヤマフェスタ、12、13年オルフェーヴルの2着が最高着順だが、3頭の共通点は現地で前哨戦を使ったこと。古馬だった3頭はフォワ賞・仏G2を選択。本番の3週前に行われる、同じロンシャン競馬場の芝2400メートルをひと叩きして状態をアップさせた。

 昨年のキズナは3歳限定のニエル賞・仏G2(1着)に参戦。フォワ賞と同様で、本番と同じ舞台設定だ。田重田厩務員が当時を振り返る。「ニエル賞での状態は良くなかったけど、1度使って良くなっていた。それに凱旋門賞の時は2回目だったから、ロンシャンの馬房でも落ち着きが違った」。ひと叩きの効果はもちろんのこと、コース経験、馬運車の輸送、いつもと違う馬房など“慣れ”も必須というわけだ。

 来年も参戦を表明している凱旋門賞について、佐々木晶三調教師と田重田厩務員は「前哨戦を使わないつもり」と口をそろえる。武豊騎手も「前哨戦は馬によってメリット、デメリットがあるからね。でも、キズナはもう(前哨戦を)使わなくていいと思う」と話す。1回経験しておけば十分だという。

 ところで、どんな日本馬に勝つチャンスがあるのだろうか。今回のジャスタウェイが凱旋門賞初騎乗だった福永祐一騎手が、こんな感想を述べる。「後ろから切れる馬は合わない。あの馬場にマッチする馬じゃないと勝てない」。過去の騎乗馬で挑戦したかった馬は?そんな問いに「ネオユニヴァースとキングカメハメハ」と返ってきた。ネオユニヴァースは重馬場のダービーを制した03年2冠馬。キングカメハメハは04年NHKマイルCとダービーを制覇。馬場や距離を問わず、器用さを兼ね備えたオールラウンダーが求められるのかもしれない。

 フランス競馬通と言えばこのジョッキーだ。昨年はフランスに長期滞在、今年も短期間とはいえ現地で調教やレースを経験した藤岡佑介騎手が、興味深い話をしてくれた。「日本馬は自分で走ることを教えられている。でも、欧州馬はジョッキーが動かす。馬づくりから違いますからね。ロンシャンは下りも長い。前進気勢の強い馬はマッチしない。首が高くて体を起こすような走りが合う。長く止まらない馬がいいんです」。日本と海外では、調教方法の違いから、馬の走法や、ジョッキーと馬の関係が根本的に違う。確かに凱旋門賞の勝ち馬に限らず、欧州馬は体を起こした走りをする馬が多い。トリッキーなコースに腕達者の騎手が集うレース。鞍上が動かす馬がフィットするというのもうなずける。

 “チーム・ノースヒルズ”として、キズナと一緒に来年の凱旋門賞挑戦プランを掲げるのが、今年のダービー馬ワンアンドオンリー。橋口弘次郎調教師といえば、ハーツクライで06年ドバイシーマクラシックを制しており、海外の勝ち方を知る指揮官だ。「100%の出来では足りない。馬を100%以上に仕上げることを考えたいね」と、状態面が鍵を握ることを強調する。藤岡佑介騎手の言う“長く止まらない”競馬が当てはまるのが、ワンアンドオンリーのダービーや神戸新聞杯。「ジョッキーも凱旋門賞騎乗の経験を生かしてくれるだろう」とはトレーナーだ。2度目となるロンシャン競馬場の騎乗で、横山典弘騎手がどう操るのかも興味深い。

 ここ2年、日本馬の前に立ちはだかったフランスのトレヴは、当初の引退予定を撤回して凱旋門賞史上初となる3連覇を目指すという。世界最高峰の一戦に向けた戦いはもう始まっている。(デイリースポーツ・井上達也)

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