高木美帆 涙の銀 バンクーバーでの苦闘…ソチ失意の落選 8年間耐えてつかんだ栄光

 「平昌五輪・スピードスケート女子1500メートル」(12日、江陵オーバル)

 女子1500メートルで高木美帆(23)=日体大助手=が1分54秒55で銀メダルを獲得した。日本のスピードスケート勢では2大会ぶりで、自身初の表彰台となった。最も得意とするこの種目では今季出場したW杯で4戦全勝の快進撃。狙った金メダルには届かなかったものの、複数のメダル獲得を期待される今大会でまずは一つ目を手に入れた。

 こぼれた笑みにも涙にも、うそはない。日本のエースへと成長した高木美が、大本命の1500メートルで悲願の銀メダル。「うれしかった」とゴール直後は力強くこぶしを握った。

 しかしタイムを確かめまた思う。「(優勝したブストとの)0・2秒って差を見て金メダルを逃したんだって実感が湧いてきた」。こみ上げてくる思いは、二人三脚で歩んできたヨハン・デビット・コーチの顔を見た途端、めったに見せない涙となってあふれ出た。

 15歳で出場した8年前のバンクーバーでは惨敗。4年前のソチ五輪には立てなかった。全てをスケートに懸けてきた4年間。特別であるが故に、五輪を意識するのが怖くなったときもある。口にするのも自然と避けた。それでも強い思いで戦えたのは、コーチの言葉があったからだ。

 2年前に初めて会ったときから「日本人とは違う勝負への貪欲さを感じた」。印象的なのは、海外での大会中に今回敗れたブストの滑りを見て「やっぱり強いね」と話しているとき言われた一言だ。「同じ人間ができることなのに、なんで自分はできないと思うんだ?」。目を丸くしてそう聞かれた。「俺だったら、同じ人間ができるなら自分にもできるって思う」。そんなコーチと接するうちに、思考回路が徐々に変化していった。

 高木美はこの日、メダリスト会見でこう言った。「銀メダルは私よりブスト選手が強かったから。でも1000メートルやパシュート(団体追い抜き)では勝てないとは思っていない。同じ人間ができていることなので」。師がくれた大切な言葉は今や高木美の信条だ。

 冬季五輪のスケート陣で1大会複数メダルを獲得したのは長野五輪の清水宏保の2個(500メートル金、1000メートル銅)のみ。女子初の快挙を信じ、新たな道を切り開く。

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