【ボート】2万5000円が44円になった話
「ボート記者コラム・仕事 賭け事 独り言」
ボートレース記者は、ピット取材に携帯電話を持ち込めない。公営ギャンブルが、さまざまな形で手を尽くしている公正保持の一環である。1月に発覚した「元ボートレーサー八百長事件」の、ずっと前から決まっている。
このルールで何が困るかと言うと、「写メ」が使えないことだ。一般戦では、記者が写真を撮るケースが多い。だが、カメラを忘れたり、故障した場合に「写メ」で代用できないのだ。
先日、私物のニコンのデジカメが壊れた。落とした弾みで液晶部分が外れ、辛うじて本体にぶら下がっている状態。幸い、撮影機能に影響はなく、養生テープで固定して使っていた。しかし、見栄えも具合も良くないので、購入した有楽町の大手家電量販店で修理の相談をした。
修理窓口担当者は「メーカーに出しますが…部品交換が必要な場合、その部品があるかどうかで時間も費用も変わってきますね」と、こちらの不安を募らせる。見積もりを尋ねると「部品取り寄せだと、2万5000円くらいになるかもしれません」と、雲行きが怪しくなってきた。
買って2年足らずで、購入時は店の「5年間保証」にも入った。それを伝えると「ぶつけたり、落としたりでの故障は、保証できないんですよね」と、バッサリ。「買い換えた方が安くつくかな」と、つぶやくと「そういう場合もあります」と、返って来た。
取りあえず、修理依頼は保留して店を出た。量販店が『メーカーに出す』と言うのだから、「ダメ元か」と思いつつ、スマホで「ニコンプラザ銀座」の場所を調べた。銀座7丁目まで歩いて10分ちょっとだった。
「ああ、これは液晶画面の取り付けネジが外れてますね。写真が撮れているのなら、ネジを付け直せば大丈夫ですよ」と、窓口のお兄さんは、カメラを見てニッコリ笑った。
バックヤードに入って、しばらくすると「ネジ、ありました。直りましたよ」と、カメラを手に戻って来た。意外な展開に驚きながら「ありがとう。いくらですか?」と聞くと、「ネジ代の44円で結構です」と、神の声。ニコンさん、「ダメ元」なんて思ってごめんなさい。デジカメは、レース場で元気に働いてます。(関東ボート担当・津舟哲也)