【ボート】SGではファンの声援がエネルギー源

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 ボートレースのSG-。それは地道に勝利を積み重ね、その栄光の報酬として選手に出場権が与えられる、艇界最高峰のレース。歴戦の猛者たちが真っ向勝負に挑み、多彩なテクニックに魅了されたファンの興奮と熱狂が一体となる光景は、まさに古代の「闘技場」スタイルだ。満員のスタンドから沸き起こる歓声は、選手たちのハートにダイレクトに響きわたり、歴史的な名勝負のスパイスとして勝者に降り注ぐ。「おめでとう」、そして「ありがとう」-。この感謝の言葉は、選手の闘争心に大いなるパワーを与え続ける。

 最終日は1万人を超えるファンが児島ボート場に集まり、毒島誠(35)=群馬・92期・A1=の優勝で大盛況のうちに幕を閉じた今年のSG・ボートレースダービー。取材を通じて、記者が最も印象に残ったレースは、5日目に行われた準優勝戦12Rだ。

 大会のハイライトとも言える熱戦は、得点率トップで予選を突破し、1号艇から優勝戦進出を狙った田村隆信(徳島)に、4カドを選択した2号艇の石野貴之(37)=大阪・90期・A1=が襲いかかる。コンマ02の極限のスタートから、豪快なまくりで田村を粉砕。1Mからバックストレッチで加速すると、後続を一気に引き離し、独走の1着で優勝戦のプラチナチケットを勝ち取った。

 3着に敗れた田村を中心に舟券が売れていただけに、スタンドを埋め尽くしたファンからは罵詈(ばり)雑言のヤジが飛び交うことも予想されたが、レースを記者席で見届け、ピットに向かう記者の耳に入ったのは、「石野ありがとう!」の大声援だった。

 石野はレース後の記者会見で「ありがたかったですね」とファンの歓声に感謝の弁を述べた。もちろん、舟足はライバルを上回る上位級の仕上がりだったが、SGV6を誇る実力者には、何よりファンの応援が闘争本能を活性化させるエネルギーとなる。「割りと声の通る人からの声援が、進入から聞こえてきて気合が入った。(自分の)スイッチが入りすぎて危なかった」と苦笑いでレースを振り返った。3号艇で臨んだ優勝戦は、惜しくも2着で準Vに終わったが、全身全霊で表現した絶対的な勝負強さは、間違いなく大観衆のハートをわしづかみにしたはずだ。

 そしていよいよ今月19日からは、桐生ボートでSG・チャレンジカップが開催される。2019年の賞金ランクトップに躍り出た毒島は、待望の地元SG戦にがい旋。もちろん、賞金ランク7位の石野も参戦し、両雄のガチンコの名勝負に期待は大きく膨らむ。記者も、満員の桐生のスタンドから与えられるファンのエネルギーと、選手の闘魂がシンクロする瞬間をじっくり味わってみたい。(関西ボート担当・保田叔久)

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