【ヤマヒロのぴかッと金曜日】冬到来で考えてみた。薪ストーブと山の整備とクマ問題の行末と…
師走も半ばを過ぎたというのに日中は20度近くまで気温が上がり、いまだ年の瀬を感じられないでいる。
とはいえ朝晩の冷え込みは厳しい。年が明ければ本格的な寒さになるだろう。なので抜かりなく冬支度に取りかかろうと、今年も家の裏庭に薪を用意した。大人の背丈ほどに積み上げた薪を眺めながら「これでこの冬を乗り切れる」とホッとした気分になる。滋賀で真面目に薪づくりに取り組む、この道のエキスパートの田代文男さんから譲ってもらっている。
薪ストーブを使っていると言うと、大概「優雅な生活をしてるね~」といった顔をされる。確かにストーブ自体はエアコンより高価だが、これ1台あれば家全体が暖かくなる。ちゃんとメンテナンスをすれば何十年も使えるのだ。燃料の薪も、暖房を使った時の電気・ガス代や、灯油などと比較してもさほど高くない。
ヨーロッパでは化石燃料に頼るのがブルジョアで、金が無いから山へ行って木を切り、その薪を燃料にしてきた。使う人があまりに多いので一部で環境問題になっていることも承知しているが、いくらでも対策は講じられる。
わが国は、国土の3分の2を森林が占めている。山を整備して切り出した木を最低1年乾燥させると、燃料として使えるのだ。災害等でライフラインがストップした時には、この薪ストーブさえあれば近所の人に来てもらって、共に寒さをしのぐこともできる。多少の手間と、火の扱い方は生きていく上での授業料のようなもの。時間さえあれば、自分の手で薪作りからやりたいくらいだ。
エネルギーを金で買って環境整備をおざなりにした結果、山は荒れ果ててしまい取り返しのつかない問題まで抱える結果になった。その一つが、クマ対策だ。新聞報道によると本年度のクマによる人身被害は11月末時点で230人、死者は13人。記録を取り出して以降、最悪となった。
人里まで降りてきてしまったため“有害捕獲”として、駆除を含む捕獲数も10月末までに9867頭に上った。「緊急銃猟」の制度を導入したり自衛隊が箱わなを運んだりしたが、そんなのは応急対策でしかない。現状で人間の命を守るためには致し方ないのだろうが、対策をこまねいていると来年以降もクマの恐怖におびえ、駆除するだけになってしまう。何十年か先にはクマは絶滅してしまうのではないだろうか。
環境省は来年度から全国調査に乗り出し、正確な個体数データや生息域を基に自治体別の管理計画を主導するそうだ。被害の抑止に期待したいが、そもそも、なぜクマがヒトの生活圏にまで入り込むのか。専門家によると、餌となるブナの実が1年ごとに豊作と凶作を繰り返し、豊作の年に繁殖したクマが食べる実が少なくなって街中に多数現れた可能性が高いのだとか。
また、過疎化した中山間地域の衰退や耕作放棄地の増加で、クマの活動エリアが徐々に広がった。つまり人間社会の変化も無関係でないという。幼い頃、田舎の婆ちゃん家に遊びに行った時に入った薪風呂のあったかさも、伯父さんがしょっちゅう薪割りをしていたことも忘れられない。
快適生活に慣れきってしまった今ではこんなこと言ってもあまり共感は得られないだろうが、私は私なりに、自分ができる範囲でやれることからやっていこうと思う。(元関西テレビアナウンサー)
◇山本浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。
